» page top
ReIMG_4316

「テレビゲームを一生懸命やっていれば、褒め称えられる世界になってほしい」国内eスポーツの第一人者・筧誠一郎氏の想い
2018年8月30日


IMG_4280
 

マスコミや世間が得体の知れない物を見るようになってほしくない

 
―日本と世界とではeスポーツに対する考えかたはどのように異なりますか?
 
:スポーツという言葉の捉えかたが違うと思います。eスポーツは「エレクトロニックスポーツ」の略ですが、スポーツという言葉には本来、「競技」という意味と、「楽しむ」という二つの意味があります。スポーツは楽しむものだと。海外は、テレビゲームを楽しもうとする文化があります。
 
海外ではテレビゲームを4、50代になっても楽しむ人がたくさんいます。老人会のゲートボールじゃないけれど、ああいう感じでみんなが勝ち負けを楽しんでいるわけです。海外ゲーマーの平均年齢は日本に比べて高いというデータもあります。
 
一方、日本人にとってゲームは子供向けや課金型というイメージが強いです。子供が親のスマートフォンを使いこみ重課金してしまうこと、ガチャの表示が恣意的であることばかりがクローズアップされてしまい、ゲームを楽しむということがないがしろにされています。このような世間の偏見によって、プロゲーマーが「大人になってもゲームなんかをやっている人」と映るわけですよね。そういうのは非常に寂しいなと。
 
スウェーデンには「シルバースナイパーズ」という、平均年齢73歳のガンシューティングのチームがあります。メンバーの1人の女性は「ティーンスレイヤー」というハンドルネームを名乗っているんです(笑)。さらに、PCメーカーのLenovoがスポンサーについて、全世界ツアーをやっています。シルバースナイパーズのメンバーが登場するだけで会場が大盛りあがりする、そういう余裕のあるゲーム文化が残念ながら日本にはまだないので、インベーダー世代と言われていた人たちが、大人になってもインベーダーゲームを遊び楽しむような文化が認められるようになってくれるといいですね。
 
―フィジカルスポーツこそがスポーツだという根強い認識がそうさせているのでしょうか?
 
:歴史的なことも関係してくると思います。例えば、将棋は賭け将棋が行われていた時代があり、ネガティブなイメージがついてしまった時期もありました。それを新聞社の後援や、テレビでの解説番組などが始まるなど、業界の努力によって、将棋は格上の競技のようになっていったわけです。テレビゲームがそういう風になれなかったのは、やはり「遊び」というイメージが強すぎるのと、何かというとテレビゲームを悪者にする時代風潮があったからです。
 
ただ今後は、マスコミや世間が得体の知れない物を見るようになってほしくないです。eスポーツは多くの日本人が思っている以上に、世界ではものすごく賞賛されています。また、海外では教育とeスポーツが強く結びつき始めていることも知ってもらいたいなと強く思います。
 
―日本でeスポーツ普及を阻んでいる大きな壁はありますか?
 
:阻んでいる要因としてよく言われているのは法律です。
韓国のPC房のような、eスポーツの練習場を作ろうとすると、風営法に抵触するので24時間営業ができないですし、ゲームセンターでは賞金を出せないんです。そうなると盛りあがりづらいという部分もあります。日本の格闘ゲームプレイヤーは賞金よりも、自身の名誉、実力の証明のために戦っていたようなところがあるのですが、海外では当たり前のように賞金や出演ギャラが出ていたりするのでギャップを感じるわけですね。
 
あと海外と決定的に違うのは刑法の賭博罪に抵触するかどうかです。海外で当たり前にできているゲームコミュニティの成長を阻む法律がたくさんあるのです。
 
あとはeスポーツという言葉に馴染みないということだと思います。だから、eスポーツは何なのかという啓発活動が必要だなと思っているんです。「野球」「サッカー」と聞いてそれが何かイメージできるくらいまで認知度を高めないとやっぱり発展しないと思います。
 
東京にいると、eスポーツをみんなが知っていると思いがちですが、まだ地方には伝わっていません。
 
例えば弊社は積極的に地方都市でeスポーツイベントを行っています。そこに多くのお客さんはまるで珍獣を見るような目で集まってくるのですが、実際に選手たちが盛り上がってプレイしている姿や画面の中で行われている試合に触れて、ゲームをプレイしなくても観るだけでもおもしろいと感じてくれる場合があります。こうした活動の積み重ねが普及に繋がると良いなと感じています。
 
―eスポーツ普及にともない懸念していることはございますか?
 
: 次第にeスポーツが注目されると、SNSなどで今まで見過ごされてきた、対戦相手のプレイヤーを誹謗中傷する人のふるまいなどが必要以上に取り上げられて炎上する可能性が出てくるかもしれない、という懸念はあります。だからそういうことはダメだよと、きちんと教えていかないといけないと思います。
 
日本はまだプロの歴史も浅いですし、スポンサーさんがついているのに暴言吐いちゃうとかありますね。普及にはインターネットリテラシーを高めることが重要だと思います。
 
次ページ>この本を入り口にeスポーツに興味を持ってもらえれば嬉しいです
 



過去記事はこちら!

「映画には人生を変える力がある」『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』前田哲監督インタビュー

20181130_155606
講談社ノンフィクション賞と大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』が、今月28日(金)に公開されます。本作は、筋ジストロフィー症を患っている主人公・鹿野靖明と鹿野さんを支えるボランティアの克明な記録とともに「生きる」とはど...(2018年12月26日) >もっとみる

本は日用品 『本屋の新井』の著者・新井見枝香さんの哲学

unnamed
 「新井さんがプッシュした本はヒットする!」という都市伝説(?)もあるほどのカリスマ書店員が三省堂書店にはいる。それが今回『本屋の新井』を出版した新井見枝香さんだ。 本を読む人が減り、書店も年々減り続ける状況のなか、それをもろともせず、独自のアイディアで本を売り、テレビやラジオなど...(2018年11月16日) >もっとみる

ラブコメ王・瀬尾公治先生が描く少年漫画編集部の熱い現場が舞台の『ヒットマン』

51W+hCWmhzL (1)
 『涼風』、『君のいる町』、『風夏』と3作連続アニメ化され、ラブコメ王ともいえる瀬尾公治先生。  今回は、最新作で新人編集者♂と新人マンガ家♀が少年漫画編集部を舞台に週刊20Pに命を懸ける情熱を描いた『ヒットマン』が10月17日に発売された。...(2018年10月29日) >もっとみる

どうして目がよくなると若返るの? 著者・日比野佐和子先生と、監修・林田康隆先生に聞いてみた

4
  関連記事一覧【立ち読み連載】日比野佐和子先生の新刊『目がよくなると 10歳若返る』 ←毎日17時更新!!//   10月に発行されたゴマブックスの新刊『目がよくなると、10歳若返る』。この本の著者である日比野佐和子先生は、『眼トレ』をはじめ累計55万部を超える著書のほか、アンチエイジング専門医としてテレ...(2018年10月25日) >もっとみる

直木賞受賞島本理生さん 『ファーストラヴ』というタイトルに込めた想い

IMG_4328(I)のコピー
今回は芥川賞に4回、直木賞に2回ノミネートされ、第159回直木賞が念願の受賞となった島本理生さんです。 受賞作の『ファーストラヴ』は、ある事件をきっかけに見えてきた家族間の闇に迫るミステリー風の作品となっている。 電子書籍ランキング.comでは、受賞した思いから作品への思いまでをお伺いしました。...(2018年09月28日) >もっとみる