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直木賞受賞島本理生さん 『ファーストラヴ』というタイトルに込めた想い
2018年9月28日


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「あの初恋は本当に初恋だったのか」という問いかけ

―― 『ファーストラヴ』というタイトルにしたのは。

島本:恋愛だと思っていたものが、実は恋愛の名を借りた偽物だったことって、あると思うんです。それはこれまでの小説にも書いてきたことで、とくに思春期の頃はまわりに危ういものがたくさんあった。そんな10代の頃の「あの初恋は本当に初恋だったのか」という問いかけをしたいと思い、このタイトルにしました。そんなふうに恋愛と似て非なるものと決別する一方で、今作では一歩進んで、恋愛と似て非なるものと和解する場面も欲しいな、と。そこから由紀と迦葉のエピソードが出てきました。

―― 女性視点、男性視点、親の視点といろいろな角度からこの作品を語っていただきましたが、どういった人に作品を読んでもらいたいとかありますか。

島本:環菜や由紀と同じような痛みを抱えている女性が読んでくれて、なにかしら救いになれば、すごく嬉しいですね。また、今回はミステリー的な要素もあったりして、これまでの小説に比べると男性も読みやすくなっていると個人的には思うので、ぜひ男性にも手に取ってもらいたいです。実際、直木賞受賞が決まってから、男性の購入者が増えているそうなので、男女問わず読んでもらえたら嬉しいですね。

―― 直木賞を受賞したばかりで恐縮ですが、今後はどこを目指していきたいとかありますか。

島本:大きな賞をいただいた後ってほっとしてつい力が抜けすぎてしまったりもするので、作品のクオリティを落とさないというのが一番かな。あとは今まで積み上げてきたことをベースにしつつ、またどんどん新しいことに挑戦していきたいですね。
 今作は、主人公と被告人が分かり合うことで解明に向かうというお話でしたけど、次回作ではむしろ完全に対立するものを書きたいなと思っています。法廷というよりは、取調室の中のような普段一番覗けないところの話を書きたいと思っていて、今、勉強中です。
 あとは、今、チームプレーに興味があるので、そういった要素を取り入れたいなと思っています。

―― どういった感じのチームプレーになるのでしょうか。

島本:仕事においてですね。次の話は主人公が女性検察官なので、そこで事件に協力していく人たちとの連携を考えたりしています。

―― 話の中に人物を多くだして、連携し合うみたいなイメージですかね。

島本:そうですね。今までも登場人物は多かったのですが、複数の能力が完全に協力し合って一つのことを成し遂げる、というよりは、あくまで一対一の関係性がメインだったので。ちょっと違うパターンにも挑戦してみたいなと。

―― 最後に読者に一言いただければと思います。

島本:今回は内容的にもより幅広い層に面白く読んでいただける小説になったのではないかと思うので、未読の方は手に取っていただけたら嬉しいです。とくに今まで「女性向けの恋愛モノはちょっと」という風に思っていた方にも今作は手に取りやすいかな、と。せっかくの直木賞受賞という機会なので、今作を通じて、読者の幅が広がって過去の作品にも興味を持ってもらえたらいいなと思います。

 
島本理生(しまもと・りお)
1983年東京都生まれ。
2001年『シルエット』で群像新人文学賞優秀作を受賞。2003年『リトル・バイ・リトル』で野間文芸新人賞、2015年『Red』で島清恋愛文学賞受賞。
『ナラタージュ』『真綿荘の住人たち』『アンダスタンド・メイビー』など著書多数。

『ファーストラヴ』

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<内容紹介>
父親を刺殺した女子大生は、警察の取り調べに「動機はそちらで見つけてください」と答えたという――。
「家族」という名の迷宮を描き尽くす傑作長編。

夏の日の夕方、多摩川沿いを血まみれで歩いていた女子大生・聖山環菜が逮捕された。
彼女は父親の勤務先である美術学校に立ち寄り、あらかじめ購入していた包丁で父親を刺殺した。
環菜は就職活動の最中で、その面接の帰りに凶行に及んだのだった。
環菜の美貌も相まって、この事件はマスコミで大きく取り上げられた。
なぜ彼女は父親を殺さなければならなかったのか?

臨床心理士の真壁由紀は、この事件を題材としたノンフィクションの執筆を依頼され、取材を始める。
自らも夫とその弟との微妙な関係に悩まされながら、環菜やその周辺の人々と面会を続ける由紀。
そこから浮かび上がってくる、環菜の過去とは?
 
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