大泉さんが鹿野さんを演じることは、映画としての〝格〟が決まるので、すごく重要だった
――監督は「主演は大泉洋しかいない」とおっしゃっていますが、その理由を教えてください。
前田 : 見たらわかるでしょう。大泉さん以外イメージできないでしょう。演出の80%はキャスティングって言われているんです。大泉さんが鹿野さんを演じることは、映画としての格が決まるので、すごく重要だったんですね。大泉さんご自身が人からすごく愛される要素をお持ちだし、かといって愚痴も辛辣なことも言うし、いろんな人にツッコミをするんだけど、全然憎めないですよね。僕は大泉さんに、「鹿野役を大泉さんがやらないと、暴動が起こりますよ」と手紙に書いたんです。もし他の俳優が演じたら、「なんでこの役を大泉にやらせなかったんだ」と、大騒ぎになると本当に思っていたし、大泉さんしか考えられなかった。
自分のキャラクターに近いことをやるっていうのは、非常に難しいんです。鹿野さんに似せることや、モノマネしても本質を掴めない。筋ジストロフィーとしての一挙手一投足をリアルに再現しつつ、強烈なキャラクターを顔という肉体と声だけで感情をリアルに表現する姿は、本当素晴らしいですよね。
――高畑さんや三浦さんはいかがでしょうか?
前田 : 充希ちゃんとは、彼女の映画デビュー作を手がけて以来の付き合いで、ずっと気になる女優さんだったし、注目を浴びてく姿を本当に我が娘のように思えてワクワクドキドキ見守っていました。やっぱりこういうタイミングってあるんですよね。彼女の年齢と役柄が今回のめぐり合わせになったのだと思います。彼女は度胸が座っていて意志がはっきりしているし、こちらの予想を覆すような芝居をする。だからこそ一緒に作っていて楽しかったですね。大泉さんや充希ちゃんとの再会は奇跡的でしたね。こちらがこの役でと望んでも向こうがその役をどう思うかっていうことだけじゃなくて、互いに一緒に仕事がしたいと思っていてもスケジュール上、出演できないこともありますから。
春馬くんは、お会いして話をしてみると、今回の役柄にいけると直感しました。春馬くん演じる田中は考えすぎてはっきりできない役なんです。はっきりしないことを表現して、観客に伝えることはとても難しいんですよ。「こういうことを思っている、悩んでいる」とか、田中の表に出ていない心の中の思いをどのように表現したらいいか、真摯に向き合ってくれました。春馬くんとは毎日のように話しました。一つひとつのシーンを丁寧に考えて、考え尽くして演じてくれたことには非常に感謝していますし、今までにない三浦春馬をこの映画で観られるんじゃないかなと思います。
――他の出演者についてはいかがでしょうか?
前田 : 原田美枝子さんは『ブタがいた教室』に出演してもらっていますし、佐藤浩市さんも昔からの付き合いがある方です。メインを支える周りの出演者がしっかりしたアンカーになってくれているので、そこは本当に感謝しています。萩原聖人さん、渡辺真起子さん、宇野祥平さんがいたからこそボランティアとしてのリアリティ、疑似家族としてのファミリー感が出せたんだと思います。いくらそういうふうにしようと思っても、やはり生身の人間が出演しているわけだから、そういう雰囲気を作るのは俳優さんが実際の関係性やさりげない一言、さりげない動きで作りだせることなので、彼ら彼女らがそういうところを見事に出してくれました。
綾戸智恵さんは、僕は彼女の歌も大好きだし、人間としてすごい人だなと思っています。母親役っていうのは、演技を超えたその人の持つ人間としての力が必要だったんです。綾戸さんご自身が役を体現している方だと思います。実際、綾戸さんが演じる鹿野光枝さんはそういう存在だったそうです。決して弱音は吐かない、太陽のような存在だったとボランティアは言われています。やっぱり綾戸さんにしか、あの親子の場面での表情はできない。
竜雷太さんは、そこにいるだけで全てを語ってくれているような存在感がある方です。何も言わないでそれを演じることはすごく難しいです。やはりそこは、竜さんの俳優としての経験値があるからなせたのだと思いますし、竜さんがお父さんでいてくれてほんとよかったなとつくづく思います。
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