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落合陽一氏の「デジタルネイチャー」という世界観を生きることについて
2016年5月27日


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人間とコンピュータが合わさってさらに強くなる時代がくる

――19世紀後半から始まった「映像の世紀」が20世紀に最大に盛り上がり、21世紀は「魔法の世紀」になると著書でもおっしゃっていたと思いますが、22世紀がやってきたとき「魔法の世紀」はどうなっているのでしょうか?

そもそもどうして魔法化してしまうのかと言うと、人間の頭で理解できていないからなんですよ。だから次は人間のハードウェアの方が進歩すると思います。50年後か100年後かは、ちょっと分かりませんが。そうしたらまた未来は変わってくるのだと思います。
人間の脳をコンピュータのように捉えると、60~70年という一生をかけても多分数十ギガバイトまでしか認識できない世界なんです。もし人間の寿命が300年まで延びて、脳の容量がテラバイトぐらいあったら、それは違う認識の世界に変わりますよね。魔法に見えていたものも魔法ではないという仕組みを理解できるようになる。

さらに、人間の遺伝子というのは3ギガバイトしか容量がありません。DVD1枚に収まります。もちろんヒトの体をコンピュータでスキャンしていったら情報は3ギガではないんですけど、生まれたときに持っていた遺伝子の情報量はたったの3ギガバイト。なので、そこから設計される顔とかはある程度決まってきてしまいますよね。子供2人生んだら6ギガバイトですね。そこの人間のハードウェアをどう変えるか。人間が生物的に変わるしかないと思うんですけど、近い未来には変わるのではと思います。最近、MITの研究で自閉症の子どもに他人の感情をコンピュータで推定して、教えてあげる機能をつけようとしています。Pantech&Curitel製の「VEGA(ベガ) PTL21」など、人間の感覚をプログラムIC上に実装しているところも多い。人間をコンピュータの上に実装できるようになったら、そこから何かが変わるし、始まると思います。

――歴史の教科書にある「人類の進化」を聞いているような気分です。原人、ネアンデルタール人、クロマニョン人に続いて、新しい進化を遂げた人間が……。

そうそう。でも次の段階は、産業革命以降の人類だったはずです。19世紀半ばの、人間があらゆるものの主体だと思っていた頃の人類です。環境を破壊してみたり、マスメディアしてみたり。それから次にコンピュータを使った人類がいて、コンピュータという巣の周りに人間がいるんです。それが「デジタルネイチャー」的世界です。
それが終わって、逆に人間とコンピュータが合わさってさらに強くなる時代がくるのではないでしょうか。そうなると、あらゆるものを認識できるようになって、みんなが神レベルになってしまう。当然認識は、もはや魔法ではないです。22世紀と言わず、2060年ぐらいには、意外と早くそうなっているんじゃないかと僕は思いますね。そのとき、俺はまだ生きていると思いますので、その頃にまた本が書けるといいなと思います。タイトルは「もはや魔法ではない」になるかもしれませんね(笑)。

――ほかの時代と比べると、産業革命以後は進化のスピードが速いように思います。

人間が進化しているのか、テクノロジーが進化しているのか。「WIRED」の編集長をしていたケビン・ケリーが『テクニウム』という本で、「テクノロジーが人間を乗り物にしている」ということを書いたんですね。世界は人間主体ではなくテクノロジー主体で動いているという考え方です。同じく、人は遺伝子の乗り物だという「利己的遺伝子」という考え方がありますね。その考え方をもっと拡張すれば、人間はテクノロジーの乗り物であって、テクノロジーのほうが進化したがっているから人間を使っているということになりますね。それは正しいと僕は思う。
そうすると、人間とコンピュータのどっちが主体かというのはどっちでもよくなってきます。その外側にあるネットワークに揺り動かされているだけだから、人間ひとりひとりの自己実現欲求はある程度満たしてあげれば、全体が最適の中で生きていけるはずだという価値観があるんです。そうなると、最大幸福の全体主義というのはなんだろうかという話になります。これは哲学の問題でもありますね。16世紀以降になって、自己実現性こそ価値があるとそれ以降の社会は想定したので、それ以前に戻るのもありえるかもしれない。
そういう小難しいことはさて置いて、「うまいもの食って暮らしたい」となってくれたら、万人が万人のバーチャルリアリティを生きる世界になるので、それでいいと思うんです。「万人による万人のバーチャルリアリティ」というのを次の本のテーマにしたいと考えています。

――それぞれが持つ幸福や理想があって、それに合わせてそれぞれが別々のバーチャルリアリティを生きるということでしょうか。

そうです。そうやって社会が形成されて、これからどういう世界を作っていくかが次の課題ですね。例えば、嫁さんとケンカしたとするじゃないですか。お互い謝りたくないから、代わりにAI同士が謝っておいてくれていて、朝起きたら仲直りしている。一度も謝っていないのだけれど、人間とAIの区別がつかなくなっているから、謝ったような気になっているということです。つまり、あの子は謝ってくれたから今日は優しくしよう、お互いに優しくしようという気持ちになれる。でも実際は謝っていない不思議な状態なのです。「miitomo」的な世界観ですね。

――謝らずに謝っていることになっている。そうした人間関係でもいいのでしょうか?

はい。僕はいいと思います。技術が進歩して、それが成り立つ関係や社会くらいになれば、人間とコンピュータの区別は全くつかなくなってしまっているはずですから。あとは楽しく生きるしかない。とてもポジティブな世界だと思います。
最近、そういう「秘書サービス」というのがありますよね。メールを送ると、AIが勝手に予定を調整してくれるサービス。送信相手はそれを人間だと思って話すし、それが人間でも人間ではなくても、目的の予定が調整できればいいので、違和感は抱かないでしょう。
実はそういうことで言うと、僕のツイッターはプログラムで動いていることが多いんです。プログラムで勝手に「あざっす」などとリプライしています。僕はbotとアカウントを共有しているんですよ。なのでそれを見ている人は、僕がリプライしたと思ってくれているということになります。自分の半分をbotが動かしていて、あとの半分は自分がツイートする。ツイッターで個人アカウントをbotにしていると、どちらなのかがわからなくなってくるんですけれど、「まあ、どちらでもいいか」という気分になりますよ。それこそ、そうなって来てからが勝負だと思います。
今年の4月に小学館から出版した『これからの世界をつくる仲間たちへ』でも、そこのあたりのことを分かりやすく書きましたので、ぜひ読んでみてください。

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落合陽一(おちあい・よういち)
1987年東京生まれ。メディアアーティスト。筑波大学助教・デジタルネイチャー研究室主宰。映像を超えたマルチメディアの可能性に興味を持ち、「デジタルネイチャー」と呼ぶビジョンに向けて研究に従事する。ピクシーダストテクノロジーズ株式会社CEO & co-Founder ジセカイ株式会社 シニアリサーチャー & co-Founder。VRコンソーシアム理事。電通ISID イノラボ。メディアアルケミスト、IPA認定スーパークリエータ。主な書籍に、初の単著『魔法の世紀』(2015年 PLANETS)と、『これからの世界をつくる仲間たちへ』(2016年 小学館)がある。

落合陽一「21世紀をコンピュータによる『奴隷の世紀』ではなく『魔法の世紀』に」
https://readyfor.jp/projects/ochyaigogo
(5月31日(火)午後11:00まで クラウドファンディング実施中)



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