「惰性で生きていても絶対に後悔する」と思って一念発起
――ここからは、高槻先生の現在までの活動についてお伺いします。ご両親からマンガ家になることは反対されていたという話を耳にしましたが……。
最初は、大阪の高槻に住んでいて、一年間投稿生活後にスクウェア・エニックスからデビューしました。それから、もうかれこれ15年くらいやっています。両親はかなり厳しくて、テレビ、アニメ、マンガ禁止だったんです。だから誰もが知ってる「ドラえもん」や「ガンダム」も、子どもの頃には見ていないんです。でもマンガだけは禁止されていても、隠れてこっそり読んでいました。更に「マンガを読みたい!」という欲求を満たすために、自分で描くしかないと思って絵を描き始めたんです。当時、『サイレントメビウス』や『コンパイラ』などの麻宮騎亜先生の作品に、一番影響を受けました。
――そうだったんですね。いつ頃からマンガを描き始めたんですか?
中学生のときに「一日一ページマンガ」を描きはじめ、学校の先生の勧めもあって美術の専門学校に入学しました。マンガ関連の専門学校ではなかったのですが、そこへ行ったおかげで作画の基礎が身につきました。そこで今も付き合いのある親友と張り合って、「一日一ページマンガ」を描いていました。
その後、僕はデザインの専門学校に進学しましたが、親友は大学に進学して、ライバルがいないと気力もなくなるので、マンガは自然と描かなくなりました。学校をなんとなく卒業して、アルバイトをしていました。そんなとき、ずっと飼っていた愛犬が死んでしまったんです。それをきっかけに、「惰性で生きていても絶対に後悔する」と思って一念発起し、マンガ家の道を再び目指すことにしました。アルバイトを辞めて、月に一本、マンガを描いて送るという目標を立てて、ひたすら投稿し続けました。するとそれから10ヶ月後にデビューすることができました。
この投稿生活を始める前に「とりあえず一年やらしてくれ」と父親に頭を下げてお願いをしました。そうしたら「こうしてちゃんと話すんやったら認めたる」と猶予をもらいました。
――デビュー前に原稿を投稿するときはどのようなマンガを描いていましたか?
もう、中二病丸出しですね(笑)。今のように女の子が出てくるマンガとは違って、男主人公ばかりのカッコつけたマンガでした。とりあえず毎月50ページくらい描いて送り続けたところ、生産力があるということで佳作に選ばれて、雑誌「月刊ガンガンウイング」からデビューしました。最初の連載が終わった後、貯金もあるし、打ち合せもしやすいと思って上京しましたが、なかなかネームが通らない日々が続きました。そのときオンラインゲームにはまって、マンガ活動が疎かになってしまいました(笑)。そのうち貯金も使い果たし、ネームも通らず……。このままではいけないと思ってオンラインゲームを引退し、知り合いからグッズ関係のイラストの仕事をもらいながら、いろいろな編集者を紹介してもらいました。そうやって『女神のカルナバル』を「COMIC SEED!」で連載したのが、上京してからの最初の仕事でした。

※『はちびっと彼女』1巻より
――『はちびっと彼女』は古いRPG風のゲームの画と二次元彼女のコラボレーションというのが、特徴的だと感じましたが、どのようなときに発想が生まれたのでしょうか。
映画『第9地区』で、アフリカに宇宙人が居住する区画があるという設定から思いついた節はあります。ゲームの世界に主人公が入って行くというストーリーはよくはあるのですが、ゲームの中の人物がこっちに来るストーリーはあまりないということに気付いたんです。そこで、街の一角にゲームの街が現れるという物語の構想が生まれました。ゲームの街がやって来て、そこにかわいい女の子が現れても、マンガの中では見分けがつかないですよね。そうするとその表現は、もうドットでやるしかないと思って、あとはレトロゲームに合わせていきました。モンハン友達でもある、マンガ家のよしみる先生にドットの打ち方を教えてもらったんです。実は僕、初めのうち『メタルスレイダーグローリー』のよしみる先生だとは気づかずに、モンハンを一緒にプレイしていて。後になって、あのよしみる先生だと知り、『はちびっと彼女』の制作の相談に乗ってもらいました。よしみる先生からは、ゲーム内では容量とか細かい決まり事があるのですが、その枠組みにとらわれない方がいいとアドバイスしてもらいました。
――まさかハリウッド映画がもとになっているとは(笑)。ドット人間A子と英人との恋愛がこのマンガのテーマになっていますが、恋愛マンガもお好きですか?
そうですね。本格的に描いたことはないのですが、恋愛マンガは結構好きです。『君に届け』なんか涙ぐみながら読んでいます。『はちびっと彼女』はギャグマンガなんですが、描き方としては無機質なドットのA子を読者に「可愛い」と言わせたら勝ちだと思ったんですよ。でもいざ描いてみると、やっぱり恋愛マンガからはどんどん離れて行っちゃうんですよね。「面白けりゃいい」なんて関西人の変な血が出てきて、「結婚!結婚!」って言っているのも、既に半分ギャグになってきて……。それだとまずいので、可愛いA子を出してみたらちょっと変わるかと思って現実世界にも登場させました。あとゲーム世界では4コママンガで進行していて、それが厳しくなってきたというのもあって、現実世界を普通のマンガ形式で描いてみようと思ったのもあります。
――4コママンガが厳しいとのことですが、普通のマンガとはどのような違いがありますか?
4コマ1ページの中で、起承転結のストーリーを作らなければならないので、4コママンガは1ページの濃度が半端じゃないんです。普通のストーリーマンガなら16ページで起承転結があればいいんですけど、4コママンガを16ページやろうと思ったら、毎回、起承転結、起承転結がずっと続いていくんです。
そこで行き詰まったので、一度普通のマンガ形式に戻したんです。今は少し描けるようになってきたと感じているので、このまま4コマで行こうかなと思っています。
――『はちびっと彼女』の1章の終わりに「復活の呪文」があったり、6章のコマンドの選択欄の一番下が「重版」になっていたりするのは、重版に対する強い意志の表れでしょうか?
実はこの15年の作家生活で、まだ重版したことがないんです。なので、重版はひとつの目標ではありました。『はちびっと彼女』の連載が始まった当初も、手応えが全くなくて「また今回も打ち切りかなー」と。それで自分の中の悲しさがでていたのかもしれません。
――弊社サイトは電子書籍を扱っているのですが、電子書籍はお読みになりますか?
僕は欲しい本は紙で買っちゃうんですよね。でもこれからはさらに電子書籍が読まれる時代になるのかなと思います。本屋に立ち寄ったとき、女の子が「この本買ってたっけ?」と言うと、その子の彼氏が「これ電子書籍で買ったやん」って返事をしていて。時代は電子書籍なんだなと感じました。あと『はちびっと彼女』の単行本は税込み860円で、今回の企画を知った人も本屋で手に取ると購入をためらう値段なんです。ですが、電子書籍だと200円くらい安くて、そっちを買ってくれた人がすごく多かったです。
紙の書籍はやはりかさばってしまいますよね。本棚で保管するにしても、持ち歩くにしても。『サディロマ』を自分で大量に買い込んでコミケで配ったことも一度あるのですが、単行本だとやはり荷物になってしまう。みんな本を買いにコミケに来ているので、そこに厚い本を渡されてもタダでもいらないですよね。今回の企画でも、10万円分を配って、それを好きに使ってもらおうと思ったので、DMMカードにしました。なのでぜひ、もっといろいろな人に重版アイデア募集企画に参加してもらって、カードをゲットしてもらいたいですね。
高槻ナギー(たかつき・なぎー)
大阪府高槻市生まれ。1年間の投稿生活を経て、2000年に雑誌「月刊ガンガンウイング」からデビュー。ペンネームは、友人でもあるマンガ家のナカGによって命名された。代表作に『サディスティックフルロマンス』や『めがらにか』など。現在、WEBコミックガムで『はちびっと彼女』を連載中。
ブログ:http://nagy999.blog35.fc2.com/
コミックガム:http://www.comicgum.com/












