突然ですが、みなさんは「仮想通貨」を所有していますか?
2017年に「仮想通貨」ブームが巻き起こり、そこで仮想通貨に触れたかたもいらっしゃるのではないでしょうか?
しかし、仮想通貨で得た収益を確定申告しないと「脱税」になるとご存知ですか?
そのような仮想通貨の税体系を解説した書籍『これ1冊で大丈夫! 仮想通貨の確定申告がわかる本』(ゴマブックス)が12月1日(土)に発売されます。
本コラムでは、その書籍の内容を一部抜粋してご紹介いたします。
以下、『これ1冊で大丈夫! 仮想通貨の確定申告がわかる本』から抜粋
仮想通貨の税務上の位置づけ
仮想通貨について、本稿執筆時点では、わが国の税法上、明確な定義づけがなされていません。
このように税法や国税庁の通達・タックスアンサーなどで、税務上、定義されていない場合は、他の法律を参考、あるいは準拠するのが通例となっています。
そして、仮想通貨の定義については、2017年4月に施行された「資金決済に関する法律(資金決済法)」第2条5項が、ある程度参考になります。
5 この法律において「仮想通貨」とは、次に掲げるものをいう。
一 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
税法に基づいて仕事をする専門家は、実態を見て税務上の問題を判断しています。たとえば、税理士が税務実務を行うときは、法律に書いてある文章だけで判断せずに、取引の中身も考慮して判断しています。そのような実質面も考慮した観点から、仮想通貨を定義づけると、おおよそ次のようになるのではないでしょうか。
2. ですが同法2条5項の二に「互に交換をことができる財産的価値であって(以下略)」とあるので、株式や外国通貨建ての債券のように、価値を保存できるなにものかであるとみてよいでしょう。
3. つまり、電子的に記録された財産的価値であって電子的な方法で取引可能であり、法定通貨と同じように支払、計測可能、価値貯蔵の機能を果たすが、法定通貨ではないものと理解できます。
株式投資や債券投資をしたときに、短期的な価格変動で価値が増えることがあります。このように、価値を増やして投資した以上の儲け(利益)を得ようとして、いわゆる投機目的で株券などを保有している方は少なくありません。
もっとも投資家は、投資で得られた儲けに応じて、税金を納めています。そこには、税法上、投資によって利益を得れば、課税されるのは当たり前という考えがあります。そのため、仮想通貨についても、株式や債券を買うときと同様、価値の増大による利益を得る目的で購入したとしたら、その儲け(利益)については税金がかかってくるということは、容易に想像がつくと思います。
仮想通貨には消費税がかかる?
では、私たちがモノを買ったときに必ず払っている「消費税」は、仮想通貨の購入時にもかかってくるのでしょうか。
結論から言うと、現在は、仮想通貨を購入したときに消費税を支払う必要はありません。ただ、平成29年6月以前は、仮想通貨は「モノ」として扱われていました。そのため、税務当局は仮想通貨の購入を「消費税の課税取引」と判断して、消費税等を課すケースがありました。しかし、平成29年度税制改正において、仮想通貨の購入時は、消費税を非課税にするということが明らかにされ、消費税を支払う必要がなくなりました。
そして、消費税法施行令第9条(有価証券に類するものの範囲等)で、仮想通貨は「有価証券に類するものの範囲に含まれる」と明文化されました。この条文を根拠として、平成29年7月以降は、仮想通貨取引をした場合にも消費税等が課税されない非課税扱いに変更されました。
これはつまり、資産やモノ扱いされていた仮想通貨が、銀行券、政府紙幣、小額紙幣などと同様に、モノの購入代金の支払い(決済)手段のひとつへと変化したことを意味します。
仮想通貨が急速に存在感を増したのは2009年以降とみてよいでしょう。そんな中で、次のような二つの問題点が指摘されていました。
1.犯罪の温床になる可能性が高い
仮想通貨の特徴の1つに「匿名性の高さ」が挙げられ、それ故に犯罪や脱税、マネーロンダリングなどに利用されやすい
2.利用者の保護が不十分
仮想通貨の販売や仲介を手がける業者への規制が未整備で、新たな参入業者の審査なども十分でないため業者が破綻した場合の利用者の保護が不十分である
一部では〝仮想通貨法〟とも呼ばれる「改正資金決済法」が、2016年5月に制定された背景には、この2つの問題を解消する狙いがあると考えられます。
この「改正資金決済法」の成立によって、ビットコインおよびその他のアルトコインを含む仮想通貨は、日本政府として財産的価値を持つものであると法律上定義されたことになります。
そして、2016年から2017年にかけて仮想通貨は主に投機対象として広まっていくこととなりました。国税庁は当時、実情を踏まえた仮想通貨の税務上の取扱いについて、2017年度末から少しずつ発表して、環境整備の一助にしようとしてきました。現在は、国境を越えた支払い手段などとしても注目を集めています。
ただし、仮想通貨に関しては国によって位置づけが異なります。「通貨」と捉える国がある一方、「モノ」として捉えるなど見解が分かれているのが実情です。つまり、国際的には、定義や税務上の取扱いについて、統一的な取扱いが現段階ではないと言えます。
日本では今後、仮想通貨に関して諸外国の法整備とも整合性を取ることも想定されます。そのため、日本における仮想通貨に関する税制や法令は、今後、今とは違ったかたちになる可能性が極めて大きいとも言えます。
仮想通貨の普及や諸外国の法整備と足並みを揃えた制度の見直しが今後も行われるのは確実と言えます。関係する税制も同様です。流動的でありますが、海外の制度と整合性を採りながら、現状の税制に改正を重ねていくでしょう。
次回、「仮想通貨税務の全体像」明日公開予定。
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■著者プロフィール
小山晃弘(こやま・あきひろ)
11987年大阪府生まれ。2010年03月 同志社大学経済学部卒業。大学在学中に公認会計士資格を取得する。世界に拠点を有する大手監査法人デロイト・トウシュ・トーマツに就職。トーマツ大阪事務所に勤務し、主に東証一部上場企業の会計監査や内部統制監査を担当。世界各国に子会社を有する連結売上2兆円規模の農業機械メーカーの米国基準監査・コンサルティングを経験。拠点を東京に移し、税理士法人 小山・ミカタパートナーズを独立開業する。
■著書紹介
<内容紹介>
税務上の仮想通貨取引の現在とこれからをわかりやすく解説。
個人で支払う?
法人で支払う?
仮想通貨に詳しい税理士が教える仮想通貨の税金の本!
出た!
これからの税金の本!
仮想通貨の税金について
一番わかりやすかった。――堀江貴文
【目次】
第1章 税務上の仮想通貨とは?
第2章 仮想通貨に関する国(各省庁)・国税庁のあゆみ
第3章 仮想通貨税務の全体像
第4章 仮想通貨の税務――個人編
第5章 完全網羅版! 仮想通貨取引のケーススタディ
第6章 仮想通貨の税務上の罰則
第7章 仮想通貨の税務――法人編
第8章 法人を利用した節税
第9章 中小企業経営強化税制
第10章 海外移転という道
第11章 税務調査