突然ですが、みなさんは「仮想通貨」を所有していますか?
2017年に「仮想通貨」ブームが巻き起こり、そこで仮想通貨に触れたかたもいらっしゃるのではないでしょうか?
しかし、仮想通貨で得た収益を確定申告しないと「脱税」になるとご存知ですか?
そのような仮想通貨の税体系を解説した書籍『これ1冊で大丈夫! 仮想通貨の確定申告がわかる本』(ゴマブックス)が12月1日(土)に発売されます。
本コラムでは、その書籍の内容を一部抜粋してご紹介いたします。
以下、『これ1冊で大丈夫! 仮想通貨の確定申告がわかる本』から抜粋
ここからは、個人の所得税についてしっかりと解説していきたいと思います。
前章では、仮想通貨取引の所得区分が基本的には〝雑所得〟に区分されることは理解いただいたかと思います。ここでは、さらに踏み込んで仮想通貨の税務を理解していただくにあたり、そもそも所得税とはなにか、その全体像を知っておいてもらいたいと思います。
おおよその全体感をつかんでもらえればと思います。またその中で、仮想通貨の雑所得は所得税全体の中で、どの区分でどのような扱いを受けるのかを復習していきましょう。
あらましを理解していただくために、ざっくりと解説することにします(まえがきで述べたとおり、皆様に税理士並みの知識を持ってもらって自ら税務申告書を作成できるレベルになってもらうことを想定していませんので……)。
(配当、不動産、事業、給与、譲渡、一時、雑、山林、退職、利子)
※譲渡所得については詳しくは、一般譲渡、土地等の譲渡、株式等の譲渡に分類する。
2. 不動産、事業、山林、譲渡所得については、損益通算を行う。
3. 上記の合計である総所得金額が算出される。
4.所得控除(※)を行う。
5. 課税所得金額が算出され、これに累進税率が適用され、税額が算出される。
6.税額控除(※)を行う。
7. 既に支払っている源泉徴収額と予定納税額を控除し、最終申告税額が算出される。
そして所得税は、稼げば稼ぐほど高税率になっていくという特徴があります。さらに所得税の場合は、所得金額のレンジが上がるたびに税率がアップする「超過累進課税」と呼ぶ計算方法を採用しています。
法人税は、資本金が1億円以下等の中小企業においては所得(利益)の800万円以下の部分については、税率19%(平成31年(2019年)3月31日までの間に開始する事業年度については15%)、800万円超については、同23・2%となっており、一定税率となっています(法人税および法人税率については第6章にて解説)。個人の所得税の計算は、法人の場合と違って複雑なのです。
など、仮想通貨に関係した税金についての勘違いを一つひとつ解説していきます。仮想通貨に関する税金の仕組みをよく理解したうえで投資をして、誤った申告を行わないように注意してください。
仮想通貨は、売買、決済、アルトコインへの交換、マイニングなど、取引に類することをしたら課税されるのが基本です。では、課税されるのはどのタイミングでしょうか。
筆者も、仮想通貨取引と税金についての相談をよく持ちかけられますが、多くの方が税金のかかるタイミングについては勘違いをされています。
ここで超過累進税率をご理解いただくために、よくある勘違いを解決しておきたいと思います。
話を単純化するために、所得(利益)が7000万円のケースを例にとってみましょう。
≪誤った理解≫
7000万円×45%=3150万円
これは所得が4000万円を超えたら、所得全額に対し、45%が一律にかかってくるという理解に基づく計算です。これでは超過累進税率というより超過税率という考え方になります。
この誤解に基づく考えでは、たとえば、4000万円の所得が既にあって、追加で100万円の利益が取れる仕事があっても、合計所得が4100万円になります。一見するとこのような高額時の税率は、最高の45%になってしまうので、ちょうど税率が上がる前の所得ギリギリ(3999万円とか)で止めておいた方がいいという(誤った)判断をしてしまうことがよくあります。
実際に、皆様も聞かれたことがあるかと思います。
≪正しい理解≫
正しい理解(計算)は以下になります。
7000万円に対して、各所得金額と各税率を乗じ、合計したものが税額になります。
195万円(195万円-0万円)×5%=9・75万円
135万円(330万円-195万円)×10%=13・5万円
365万円(695万円-330万円)×20%=73万円
205万円(900万円-695万円)×23%=47・15万円
900万円(1800万円-900万円)×33%=297万円
2200万円(4000万円-1800万円)×40%=880万円
3000万円(7000万円-4000万円)× 45%=1350万円
合計2670・4万円
が正解となります。
ひと言で言うと、所定のレンジを超過する度にその超過部分に対してだけ、高い税率が適用される……これが〝超過累進税率〟の正しい理解になります。
実際は、このように所得の幅ごとにその都度計算していてはとても手間なので、「所得税の速算表」というものを利用します。計算結果が同じになるように作られている表が、国税庁HPにある所得税の速算表」の正体です。この表はとても便利です。一発で計算結果が求められるように右に「控除額」の欄が設けられており、
と計算することによって簡単に税額が算出できるようになっています。つまり、
7 0 0 0 万円×45% -4 7 9・6 万円=2670・4万円
と積み上げ計算との金額は一致します。
実際は非常に便利な速算表だったのですが、表に対しての巷に溢れる誤った理解では、表中の所得金額と税率のみが注目されてしまいました。結果として、いかにも所得金額がその幅(レンジ)を越えると一律に高い税率が適用されるかのような誤解が一人歩きしてしまっているのです。
全体論は以上になります。
特に前章では仮想通貨の所得は、雑所得(事業として認められれば、事業所得)になると解説しました。
これは、全体像でいうと、所得税を計算するにあたっての、所得把握のスタート時点である、
1. 各種所得をその所得の性質に応じて10種類に分類する。
(配当、不動産、事業、給与、譲渡、一時、雑、山林、退職、利子)
の雑所得内の話ということがおわかりいただけたと思います。
また、上記の各種所得の算出方法はそれぞれあるのですが、雑所得に関しては、
という算出方法になります。
この総収入の注意点に関しては、アルトコインへの交換、財やサービスの購入は総収入金額に含まれてしまうと理解してください。必要経費の範囲は取得原価に始まり、仮想通貨取引に関連する書籍代、セミナー代、交通費、パソコン関連費用などが含まれます。
(その他の経費にできるもの)
必要経費の例示
・取得原価(後述)
・取引手数料
・書籍代
・セミナー代
・交通費
・通信費
・パソコン関連費用
・税理士への報酬、確定申告費用 など
※ すべて〝仮想通貨取引に関する〟というのが前提になります。仮想通貨取引に関係のない交通費や通信費等は当然必要経費には入りません。
なお、最大の経費である〝取得原価〟について、その算定方法は2種類あります。
この取得原価の算出方法がとても重要、かつ、とても煩雑なものと想定されます。取得原価の算出を勘違いされている方がとても多いので、わかっていたつもりでもこの取得原価の算出は、特に注意されることをお勧めします。
雑所得の算定にあたり、必要経費のうちで大きく占めるのが仮想通貨の取得原価になります。仮想通貨の取得原価の算出方法には大きく2つあります。それは、「移動平均法」と「総平均法」です。
まず、原則的な方法である移動平均法、次に毎年継続適用を前提として総平均法があります。
「毎年継続適用を前提として」ということは一度こちらを選択すると翌期以降もこの算出方法を選択しないといけません。
総平均法はとても簡単な取得原価の算出方法です。一年の購入金額の累計を一年間の取得数で割り算して、一単位あたりの取得単価を算出します。これを売却時の取得原価とします。2017年度の仮想通貨の確定申告についてはこちらの方法を取られた方がとても多いかと思います。
一方で、移動平均法については保有取得購入原価の累計を都度保有数で除して売却時の取得原価を算出する方法です。
移動平均法というネーミングがすごく難しいかもしれません。買ったその都度、平均単価を求めるという意味です。〝その都度平均法〟と理解していただいても大丈夫です。
結論としては、どちらの取得原価の算出方法を選択しても、(単年度所得に差は生じますが)全体期間をトータルした所得金額は変わりません。
実務上、この取得原価の算出のために、さまざまな計算ツールを利用されることもあると思います。逆に言うと、このような計算ツールなどがないと、期中に何百回何千回と取引をされている方は、とてもご自身で計算ができないと思います。
ただし、このような各種計算ツールやエクセルを使う場合にはその算出ロジックが正しいのか誤っているのか、判断できないことが多いようです。信頼できるツールや税理士等の専門家に検証やチェックを依頼されることを強くお勧めします。
計算ツールの作成元が不明である場合も多いので、無料ツールを利用の際にも計算結果の信頼性については注意深く確認する必要があります。ご注意ください。
また、その他、取引所を介さないで売買や交換をしたような場合にもこの取得原価の算出に漏れがある場合もあります。その場合には実態と大きくかけ離れてしまう可能性があります。
取得原価の拾い漏れがあると一大事です。売却時価100万円であるのに、取得原価が0となってしまうのです。本当は50万円で取得していても、実際の所得とは大きくかけ離れた計算結果となってしまうリスクがあります。
これゆえに、雑所得の所得計算式自体は簡単なのですが、取得原価の算出が曲者と言われるのです。
では計算についての重要なポイントですが、次の5つがあります。
1.取引データがすべて漏れなく抽出できているか
2.取引所を介さない取引などのデータに載っていない取引の漏れがないか検証する
3. その都度その都度、取引の際にはその取引履歴が分かるようにエクセル表やデータ・紙面などでしっかりと管理しておく
4.信頼できる計算ツール等を利用する
5.仮想通貨税務に詳しい税理士等の専門家をフォローに入れる
以上を踏まえると、上記の作業を一人でやることがいかに大変であるかがご理解いただけると思います。
次回、「完全網羅版! 仮想通貨取引のケーススタディ」明日公開予定。
「続きが読みたい!」「本を購入したい」かたはこちらから予約受付中!!
■著者プロフィール
小山晃弘(こやま・あきひろ)
11987年大阪府生まれ。2010年03月 同志社大学経済学部卒業。大学在学中に公認会計士資格を取得する。世界に拠点を有する大手監査法人デロイト・トウシュ・トーマツに就職。トーマツ大阪事務所に勤務し、主に東証一部上場企業の会計監査や内部統制監査を担当。世界各国に子会社を有する連結売上2兆円規模の農業機械メーカーの米国基準監査・コンサルティングを経験。拠点を東京に移し、税理士法人 小山・ミカタパートナーズを独立開業する。
■著書紹介
<内容紹介>
税務上の仮想通貨取引の現在とこれからをわかりやすく解説。
個人で支払う?
法人で支払う?
仮想通貨に詳しい税理士が教える仮想通貨の税金の本!
出た!
これからの税金の本!
仮想通貨の税金について
一番わかりやすかった。――堀江貴文
【目次】
第1章 税務上の仮想通貨とは?
第2章 仮想通貨に関する国(各省庁)・国税庁のあゆみ
第3章 仮想通貨税務の全体像
第4章 仮想通貨の税務――個人編
第5章 完全網羅版! 仮想通貨取引のケーススタディ
第6章 仮想通貨の税務上の罰則
第7章 仮想通貨の税務――法人編
第8章 法人を利用した節税
第9章 中小企業経営強化税制
第10章 海外移転という道
第11章 税務調査