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第三回 完全網羅版! 仮想通貨取引のケーススタディ

これ1冊で大丈夫! 仮想通貨の確定申告

第四回 完全網羅版! 仮想通貨取引のケーススタディ(1)

2018年11月29日

突然ですが、みなさんは「仮想通貨」を所有していますか?
2017年に「仮想通貨」ブームが巻き起こり、そこで仮想通貨に触れたかたもいらっしゃるのではないでしょうか?
しかし、仮想通貨で得た収益を確定申告しないと「脱税」になるとご存知ですか?
 
そのような仮想通貨の税体系を解説した書籍『これ1冊で大丈夫! 仮想通貨の確定申告がわかる本』(ゴマブックス)が12月1日(土)に発売されます。
本コラムでは、その書籍の内容を一部抜粋してご紹介いたします。

以下、『これ1冊で大丈夫! 仮想通貨の確定申告がわかる本』から抜粋
 
ここからは実際に仮想通貨の取引を行った場合に考えなければならないことを、場合に分けて説明していこうと思います。事例は具体的、かつ細かくケース分けして記載したつもりです。
複雑になりすぎないように手数料などは単純化しているので、実際のケースとは少し異なる場合がありますが、ご了承ください。
 また、ある程度簿記がわかる人は、【仕訳】を見てもらえると理解しやすく、ゴシックにした箇所を集計すれば、税金計算ができるようになっています。
 
【国内取引所編】
1 −1.取引所に日本円を入金した場合

 
2018年8月現在、日本の仮想通貨取引所としてはコインチェック、ザイフ、ビットフライヤー(bitFlyer)、ビットバンク、GMO、DMMなどがあります。どこを使うとしても、まずは取引所に日本円を入金してからビットコイン(BTC)を購入することになりますので、まずは日本円を取引所に入金するところから一緒に考えていきましょう。
 
【ケーススタディ】
8月15日に日本円で100円をbitFlyerに入金した。その際に振込手数料が3円かかった。
【会計処理】
会計処理項目は以下のようになります。
振込手数料………「支払手数料」として処理します。
日本円の入金……損益には影響ありません。
【解説】
入金は銀行振込、コンビニ入金、payeasy入金(クイック入金)などの方法が
あり、いずれも手数料がかかります。銀行の振込手数料や、取引所の手数料も同じです。これらはいずれも「支払手数料」という勘定科目を使って処理することになり、仮想通貨の計算における経費として取り扱うことができます。
 
1 -2.ビットコインを日本円で購入した場合
 
取引所への入金は終わりましたか?
次に、取引所を使ってビットコインを購入する際の会計処理について説明します。
まずはシンプルに日本円を使ってビットコインを購入した場合の例を解説していきます。
 
【ケーススタディ】※理解しやすいようにBTC単価を小さくしています。
8月15日に、取引所でビットコインを1枚購入しました。
その際に取引所手数料が5円かかりました。
なお、8月15日のビットコインの価格は85円だったとします。
会計処理項目としては以下のようになります。
【損益】
取引所手数料……………支払手数料となります。
ビットコインの購入……損益には影響ありません。
【説明】
仮想通貨取引所でビットコインを買う方法は、「取引所」を使って交換する場合と「交換所」を使う場合があります。
交換所取引は個人と取引所が相対で取引をする方法で、取引所取引は個人(買い手)対個人(売り手)が取引する方法になります。
どちらの場合も取引手数料がかかりますが、会計仕訳は同一となります。
なお、取引所手数料は経費になりますが、ビットコイン自体の購入代金は買った時点では経費にならないので注意が必要です。
 
1 -3.ビットコインを日本円で購入して売却した場合
 
ビットコインを購入して、値上がりしたら売却しますよね。値上がりしていなくても、値段が下がっているため損切りして売却するかもしれません。
そういった、ビットコインを売却したケースについて解説していきます。
 
【ケーススタディ】
8月15日に取引所でビットコインを1枚購入し、8月25日に1枚すべて売却し
ました。
その際に取引所手数料が1万円かかりました。
8月15日  70万円/BTC、8月25日  80万円/BTCだったとします。
会計処理項目としては以下のようになります。
【損益】
取引所手数料……………手数料として処理します。損益となります。
ビットコインの売却……購入価格との差額が損益となります。
【説明】
仮想通貨売却益は売値80万円と買値70万円との差額の10万円のプラス。ただし、売却したときの取引所手数料が1万円のマイナス。
損益としては9万円のプラスとなり、この9万円に対して税金がかかってきます。
会計仕訳は理解できなくてもかまいません。
「損益がいくらになるか?」という視点で見るようにしてください。
 
1 -4. ビットコインを日本円で複数回購入して何度かに分けて売却した場合
 
ビットコインを日本円で複数回購入して何度かに分けて売却したケース
について説明します。
ビットコインの価格は常に動いていますから、購入した時間によって、異なる値段で購入していることになります。
さらに言えば、一度だけ買った場合であっても、取引所で購入した場合は複数の売り手から購入しているケースがあります。たとえば、成行購入した場合で、異なる単価のオーダーと取引が成立した場合なども、やはり複数の売り手から購入したケースに該当します。
それでは、複数の価格で購入したビットコインを売却した場合には、税金的にはどのように処理したらよいのでしょうか?
 
【ケーススタディ】
8月1日 1BTCが65万円のときに取引所でビットコインを1枚購入。
8月3日 1BTCが80万円のときに取引所でビットコインを1枚購入。
8月10日 1BTCが90万円のときに取引所でビットコインを2枚売却。
8月15日 1BTCが100万円の時に取引所でビットコインを1枚購入。
【解説】
8月1日と8月3日にビットコインを購入した場合の会計処理は、ここでは省略します。
問題は、8月10日にビットコインを売却した場合に、どのビットコインを売ったものとみなすかです。8月1日のものでしょうか? あるいは8月3日のものでしょうか? それによって、ビットコインの購入価格が異なるので、当然、売却益も異なることになります。利益を確定するために見極めが必要です。つまり「売ったビットコインの原価がいくらか?」によって利益が変わってくるわけです。
ビットコインの原価を算出する方法は、『仮想通貨に関する所得の計算方法等について』(2017年12月1日公布)において以下のように定められています。

同一の仮想通貨を2回以上にわたって取得した場合の当該仮想通貨の取得価額の算定方法としては、移動平均法を用いるのが相当です(ただし、継続して適用することを要件に、総平均法を用いても差し支えありません。)。(第4項)

これを簡単にまとめると、以下のとおりです。

原則:移動平均法
例外:総平均法(継続適用が条件)

総平均法を利用するための要件は「継続して適用すること」以外にありません。このケースでは、基本的にはどちらを採用することも可能になっています。移動平均法、総平均法がどのような計算方法かは、以下に計算例を記載しますので確認してください。まずは、移動平均法と総平均法のどちらかで計算することを理解してもらえたらよいかと思います。
どちらを採用したかによって計算方法が変わるので利益の金額が異なります。その差はタイミングの問題(いつ利益が出るか)で、将来にわたって生じる所得の金額は一致します。ただし、所得税に関しては1月1日~12月31日の暦年で計算するので、単年度だけで考えれば税金が変わってきます。税金を早期に多く払いすぎないように、採用の判断は慎重に行う必要があります。
 
では、今回のケースの税金を計算してみましょう。
まずは、「移動平均法」を採用したケースです。ひと言で言うと、「ビットコインの売却時点」における平均単価を計算して、原価にする方法です。
【移動平均法】
売却金額:180万円
ビットコインの原価:(65万円×1枚+80万円×1枚)÷2枚×2枚=145万円
利益:180万円-145万円=+35万円
次に、「総平均法」を採用したケースです。
ひと言で言うと、売却時点で保有しているかどうかにかかわらず期間全体で購入したBTC1枚あたりの平均単価を原価とする方法です。
 
【総平均法】
売却金額:180万円ビットコインの原価:65万円×1枚+80万円×1枚+100万円×1枚)÷3枚×2枚=163万3333円
 
利益:180万円-163万3333円=+16万6666円
 
同じ取引ですが、計算方法によって利益の差が大きく異なっています。
 つまり、移動平均法によれば利益が大きく計算され、総平均法に従えば利益が小さく計算されています。この年だけでみれば、移動平均法で計算したほうが税金が高くなり、総平均法で計算したほうが税金が安くなるのです。
 仮に納税者がその年によって計算方法を自由に選択できるとすると「今年は移動平均法にしよう」、「今年は総平均法のほうが税金が安くなるから総平均法にしよう」などと、納税者が得するようになってしまいます。
 ただ、国がそのような恣意的な選択を認めるはずありません。すなわち、一度、総平均法を選んだら、移動平均法に乗換えはできないことになっています。つまり「継続適用を要件」という意味はここにあるのです。
 
なお、計算が簡単なのは「総平均法」です。
なぜなら計算例を見てもらえばわかるとおり、買い増しの都度ビットコインの原価を計算する必要がなく、年度末にその年の平均単価をたった一度だけ計算すれば足りるからです。
そのため、本来は最初に「移動平均法」と「総平均法」の両方で計算をしてみて、有利なほうを選択するのが最も賢い方法だと思いますが、間近に確定申告の期限が迫っているような場合は、一度の計算で済む「総平均法」を採用するほうが、間違いも少なく、簡単です。
ただ、計算方法を一度選択してしまうと基本は変更できないという点には注意をしてください。
 
次回、「完全網羅版! 仮想通貨取引のケーススタディ(2)」明日公開予定。
 
「続きが読みたい!」「本を購入したい」かたはこちらから予約受付中!!
 

■著者プロフィール

小山晃弘(こやま・あきひろ)
11987年大阪府生まれ。2010年03月 同志社大学経済学部卒業。大学在学中に公認会計士資格を取得する。世界に拠点を有する大手監査法人デロイト・トウシュ・トーマツに就職。トーマツ大阪事務所に勤務し、主に東証一部上場企業の会計監査や内部統制監査を担当。世界各国に子会社を有する連結売上2兆円規模の農業機械メーカーの米国基準監査・コンサルティングを経験。拠点を東京に移し、税理士法人 小山・ミカタパートナーズを独立開業する。

■著書紹介

【紙書籍】表1

<内容紹介>
税務上の仮想通貨取引の現在とこれからをわかりやすく解説。
個人で支払う?
法人で支払う?
仮想通貨に詳しい税理士が教える仮想通貨の税金の本!

出た!
これからの税金の本!
仮想通貨の税金について
一番わかりやすかった。――堀江貴文

【目次】
第1章 税務上の仮想通貨とは?
第2章 仮想通貨に関する国(各省庁)・国税庁のあゆみ
第3章 仮想通貨税務の全体像
第4章 仮想通貨の税務――個人編
第5章 完全網羅版! 仮想通貨取引のケーススタディ
第6章 仮想通貨の税務上の罰則
第7章 仮想通貨の税務――法人編
第8章 法人を利用した節税
第9章 中小企業経営強化税制
第10章 海外移転という道
第11章 税務調査

購入はこちらから



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