突然ですが、みなさんは「仮想通貨」を所有していますか?
2017年に「仮想通貨」ブームが巻き起こり、そこで仮想通貨に触れたかたもいらっしゃるのではないでしょうか?
しかし、仮想通貨で得た収益を確定申告しないと「脱税」になるとご存知ですか?
そのような仮想通貨の税体系を解説した書籍『これ1冊で大丈夫! 仮想通貨の確定申告がわかる本』(ゴマブックス)が12月1日(土)に発売されます。
本コラムでは、その書籍の内容を一部抜粋してご紹介いたします。
以下、『これ1冊で大丈夫! 仮想通貨の確定申告がわかる本』から抜粋
1 -5.アルトコインを日本円で購入した場合
仮想通貨にはビットコインだけではなく、さまざまな種類がありますよね。
2018年現在、アルトコインの種類は3000種類とも呼ばれており、いろいろな通貨が発行され、その種類や、目的もさまざまです。
たとえば、国際送金や決済の高速化を目的にするリップル(XRP)、他アルトコインのプラットフォーム通貨であるイーサリアム(ETH)、ビットコインから分裂し機能性を向上させた通貨であるビットコインキャッシュ(BCH)などがあります。こういったビットコイン以外の通貨を総称してアルトコインと呼びます。
さらに言うと、取引所によって、購入できるアルトコインは異なります。
たとえば日本の取引所でいうと、
ザイフ(Zaif)…イーサリアム(ETH)、モナコイン、NEMなど
コインチェック(CoinCheck)…イーサリアム(ETH)、リップル、NEMなど
ビットフライヤー(bitFlyer)…イーサリアム(ETH)、ビットコインキャッシュ(BCH)、リスク(LSK)など
ビットバンク(Bitbank)…ライトコイン、イーサリアム(ETH)、モナコイン、ビットコインキャッシュ(BCH)など
がそれぞれの取引所で購入できます。
さて、ビットコインでアルトコインを購入した場合については、どうなるのでしょうか。
結論から言えば、会計処理自体はビットコインと変わりません。ですので、ビットコインの章を見てもらえれば、すべて網羅できます。以下にひとつ実例を挙げておきます。
【ケーススタディ】
1ETHが3万円のときにbitFlyerでイーサリアムを2枚購入。
その際、取引所手数料が3000円かかりました。
【説明】
アルトコインはビットコインとは違い、取引所取引(個人対個人の売買という意味での)では購入できないことがほとんどです。現在のところは、交換所(企業が保有する通貨を購入する方法)を使うことになります。この場合、取引手数料がかかります。
会計処理項目としては以下のようになります。
【損益】
取引手数料………………支払手数料となります。
アルトコインの購入……損益には影響ありません。
1 -6. ビットコインを日本円で購入し、ビットコインでアルトコインを購入した場合
突然ですが、日本における基軸通貨とは何か知っていますか? 「何を言っているのだ」と、言われそうですよね。言わずもがなですが、正解は「日本円(JPY)」です。
これが仮想通貨の世界だと異なります。仮想通貨は、たとえば「日本」のように特定の国家が発行しているものではありません。どの国家でも、ビットコインはビットコインです。特定の国の通貨ではなく、ある意味、世界共通の通貨ともいえますね。
そういった性質を有するビットコインですので、アルトコインを購入する際に、日本円を使って購入する方法のほかに、ビットコインを使って購入することも可能です。たとえば、イーサリアムを購入する場合、日本円(JPY)でもビットコインでも、どちらでも購入することができる、ということです。
では、ビットコインを使ってアルトコインを購入した場合を考えてみましょう。
【ケーススタディ】
1BTCが70万円のときに購入していたビットコイン1枚を使って、イーサリアム(ETH)を購入。購入時のイーサリアムの価格は3万円、ビットコインの価格は75万円でした。購入時に取引所手数料として、0・005BTC(75万×0・005BTC=3750円)かかりました。
【説明】
ここで注意しなければならないのは、ビットコインの購入時の値段と、アルトコインと交換(購入)したときのビットコインの値段が異なっているということです。
この場合の価格変動については、ビットコインの値段が上がった分をもって利益を確定します。この例では、売却時の75万円と購入時の70万円の差額である5万円が利益となります。
これを踏まえて会計仕訳を見てみます。会計処理項目は以下のようになります。
【損益】
取引手数料………………会計上、支払手数料となります。
ビットコインの交換……含み益の金額が損益に影響します。
アルトコインの購入……損益には影響ありません。
税金の計算対象である所得の金額は、50000-3750=46250円となります。
1 -7.仮想通貨を他の取引所に送金した場合
ビットコインやアルトコインはウォレット間で送金することができます。たとえば、AさんがBさんに1BTCを送金しようと思ったら、AさんはBさんのウォレットアドレスを聞き、AさんがBさんに送金すればよいですよね。
それでは仮想通貨を送金したときの会計上の取扱いはどのようにしたらよいでしょうか。では、仮想通貨の送金をテーマに会計処理を考えていきたいと思います。
これ、実は送金をした目的によって会計処理は異なっています。いくつかパターンがあるので、類型をまとめてみます。
② 何か物品を購入するか役務を受け、その対価の支払いとしてビットコインを送金した場合
③ 特定の第三者にビットコインを譲渡した場合
④ 不特定多数にチップやプレゼント企画でビットコインを送金した場合
のいずれかのケースが考えられます。
① 自分名義のウォレットや取引所に移しただけ(単なる資金移動や送金)の場合
【ケーススタディ】
coincheckのウォレットからbitFlyerのウォレットに1BTC送金。
送金手数料として、0・005BTCかかった。
【説明】
仮想通貨の単なる送金だと、当然ですが、損益に影響はありません。
ただ、このときにかかった送金手数料は経費となります。
つまり、費用になります。
② 何か物品を購入するか役務を受け、その対価の支払いとしてビットコインを送金した場合
これは、たとえば、
・家電量販店でパソコンを購入し、ビットコインで支払った。
・お寿司やお酒を飲んで、NEMで支払った。
・デザイナーさんにイラストを書いてもらい、モナコインで支払った。
などが該当します。
この場合は、日本円で払ったにしろ、ドルで払ったにしろ、ビットコインで
支払ったにしろ、何かをしてもらってその対価として支払いをしているので、
基本的に経費になります。
【ケーススタディ】
家電量販店で5万円のパソコンを購入、0・05BTCで支払った。なお、このときのビットコインは90万円のときに日本円で1BTC購入したものとし、購入時のビットコインの価格は100万円とする。
【損益】
この場合、2つの損益を認識する必要があります。
つまり、「ビットコインの価値の変動による損益の認識」「購入した商品に支払った経費」の2つです。
購入したパソコン…………………………実際にモノを買っているので、経費になります。
ビットコインの購入(使った分)………使用した時点で損益を認識します。
ビットコインのうち使っていない分……まだ使っていないため損益を認識しません。
使った経費は50000円ですが、ビットコインが値上がりしているため、差し引きの損益は50000-5000=45000円ということになります。
③特定の第三者にビットコインを譲渡した(売った/あげた)場合
この場合は、雑所得となりますので、「1 −3.ビットコインを日本円で購入して売却した場合」を参考にしてください。
④不特定多数にチップやプレゼント企画でビットコインを送金した場合
考えられるケースとしては次のことがあります。
1.フォロワー獲得目的で、不特定多数の人に仮想通貨のプレゼント企画を行った。
2.絵師さんの絵が気に入ったため、数名にモナコイン等をチップにした。
3.Discord等で不特定多数に対し無償配布(Rain等)を行った。
1~3はともに、受け取った側は基本的には上記③で説明した雑所得に該当します。
送金した側は、その名目に応じて経費処理します。
ここまでが仮想通貨の送金に関する会計処理になります。「送金した目的に応じて処理が異なる」という点はしっかり押さえておきましょう。
1 -8.ビットコイン等のハードフォークがあった場合
機能性の改善、スケーラビリティの改善、ハッキング対応、チーム内の方針の違いなど、さまざまな理由で仮想通貨がもともとの通貨から2つに分裂してしまうことがあります。これを「ハードフォーク」と言います。
ハードフォークの対義語で、仮想通貨が分裂するのではなく、ブロックチェーン自体の仕様変更のことを「ソフトフォーク」と言います。ソフトフォークの場合、仮想通貨の数量等に影響はないので、税務的な処理は不要となります。
難しい話は置いておいて会計・税金の話だけにフォーカスすると、ハードフォークの場合のみ会計税務上の問題が出てきます。
ハードフォークの場合、分裂前の通貨を保有していると、分裂後の通貨も2倍、3倍の量を付与されることがあります。見方を変えると「タダで分裂後の通貨がもらえる」とも言えます。
ですので、ハードフォークの前は、無料でもらえる分裂後通貨を求めて買い注文が多く入る傾向が強まります。そのため価格が上昇しがちです。
たとえば、2017年にはビットコインが突然に普及してきたため、送金詰まり(送金が増えすぎ、送金処理が遅くなってしまうような現象)を起こしてしまうという、いわゆる「スケーラビリティ問題」が起こるようになってきました。こういった問題の解決方法についてビットコインのコミュニティ内で内部紛争が起こり、それぞれのメンバーが解決方法を探るべく、ハードフォークという手段が取られました。
その際に生まれた通貨が「ビットコインキャッシュ(BCH)」です。
これによって、分裂時にビットコインを持っていた人は同数のBCHが付与されることになりました。たとえば10BTC持っている人には10BCHが、0・01BTC持っている人には0・01BCHが付与されました。
ここで付与されたBCHは、2018年8月時点で1BCH=6万円ほどの価値があります。
分裂当時10 BTC持っていた人は現在価値で換算すると60万円ほど無料で仮想通貨がもらえたということになります。
さて、では無料付与されたBCHはどのように会計処理したらよいでしょうか? 事例を見ながら解説していきたいと思います。
【ケーススタディ】
2017年8月にビットコインが分裂し、bitFlyerで保有する10BTCに対し10BCHが付与された。
2018年8月に10BCHを6万円/BCHで全額売却した。
【説明】
ハードフォークした通貨については、付与された時点では利益を認識しません。
売却時に、原価0の通貨を売却したものとすることで利益を認識します。
次回、「完全網羅版! 仮想通貨取引のケーススタディ【海外取引所編】」明日公開予定。
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■著者プロフィール
小山晃弘(こやま・あきひろ)
11987年大阪府生まれ。2010年03月 同志社大学経済学部卒業。大学在学中に公認会計士資格を取得する。世界に拠点を有する大手監査法人デロイト・トウシュ・トーマツに就職。トーマツ大阪事務所に勤務し、主に東証一部上場企業の会計監査や内部統制監査を担当。世界各国に子会社を有する連結売上2兆円規模の農業機械メーカーの米国基準監査・コンサルティングを経験。拠点を東京に移し、税理士法人 小山・ミカタパートナーズを独立開業する。
■著書紹介
<内容紹介>
税務上の仮想通貨取引の現在とこれからをわかりやすく解説。
個人で支払う?
法人で支払う?
仮想通貨に詳しい税理士が教える仮想通貨の税金の本!
出た!
これからの税金の本!
仮想通貨の税金について
一番わかりやすかった。――堀江貴文
【目次】
第1章 税務上の仮想通貨とは?
第2章 仮想通貨に関する国(各省庁)・国税庁のあゆみ
第3章 仮想通貨税務の全体像
第4章 仮想通貨の税務――個人編
第5章 完全網羅版! 仮想通貨取引のケーススタディ
第6章 仮想通貨の税務上の罰則
第7章 仮想通貨の税務――法人編
第8章 法人を利用した節税
第9章 中小企業経営強化税制
第10章 海外移転という道
第11章 税務調査