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第七回 ビットコイン証拠金取引(FX)取引編

これ1冊で大丈夫! 仮想通貨の確定申告

第七回 ビットコイン証拠金取引(FX)取引編

2018年12月2日

突然ですが、みなさんは「仮想通貨」を所有していますか?
2017年に「仮想通貨」ブームが巻き起こり、そこで仮想通貨に触れたかたもいらっしゃるのではないでしょうか?
しかし、仮想通貨で得た収益を確定申告しないと「脱税」になるとご存知ですか?
 
そのような仮想通貨の税体系を解説した書籍『これ1冊で大丈夫! 仮想通貨の確定申告がわかる本』(ゴマブックス)が12月1日(土)に発売されます。
本コラムでは、その書籍の内容を一部抜粋してご紹介いたします。

以下、『これ1冊で大丈夫! 仮想通貨の確定申告がわかる本』から抜粋
 
【ビットコイン証拠金取引(FX)取引編】
3 -1.仮想通貨FXの取引所に入金した場合

 
 仮想通貨を使ったFX(証拠金取引)の税務処理について解説していきます。
 FX(証拠金取引)とは、小額の証拠金を使ってより大きな運用をすることです。
 仮想通貨FXの場合、取引所が対応している倍数までのレバレッジをかけて、自分が預けたお金(証拠金)より多いお金で取引することで、より大きな利益を出すことができます。しかし自分の預けたお金以上の取引ができる分、リスクも伴うので取引所ごとのルールをしっかり把握することが重要です。
 
リスクを抑えてより大きな利益を狙うためには、レバレッジ倍数と手数料、運営体制、ロスカットルールが適正な取引所を選ぶことが大切です。
 
次に、お金の流れを見ていきましょう。
 
 証拠金口座を介して、買いポジション・売りポジションを持つことで、お金が増えたり減ったりすることがわかります。お金が増えたり減ったりする以上、会計処理を考える必要があります。では、仮想通貨FXを行った場合、どのような会計処理を行う必要があるか考えてみましょう。
 上記の資金の動きには2つのパターンがあります。
 
1.単なる資金移動の場合。(損益は発生しない)
2.損益を伴うトレードの場合。(損益が発生する)
 
①、②、⑤、⑥については1.に該当します。
③、④については2.に該当します。
 
 ですので、税金に影響する損益としては③④のみを考えればよいことになります。これについては、3-2以降で説明します。
 ただ、利益確定の時期については、気をつけなければなりません。
 ポジションを閉じても証拠金口座から銀行口座に出金しなければ税金はかからないと考えている方がいますが、これは誤りです。トレードが終わった(ポジションをクローズした)段階で損益を認識することになりますので、注意が必要です。申告漏れがないように気をつけてください。
 
とはいえ、取引所の取引履歴を見れば正しく計算されるようになっているので、取引履歴からきちんと計算すれば問題になることはありません。
 銀行口座の入出金でなく、取引履歴から利益を計算するようにしてください。
 
3 -2.FXでトレードした場合(bitFlyer、bitMEX等)
 
BTCFXでトレードする場合、基本的に以下のいずれかのポジションを持つことになります。
1.買いポジションを持つ(値上がりを期待)。
2.売りポジションを持つ(値下がりを期待)。
 また、いずれのポジションを取るにしても、注文方法としては以下のいずれかとなります。
1.指値取引(特定の価格に注文を並べておき、価格)
2.成行取引(現在の板にならんでいるものを購入する取引)
 
買い/売り、指値/成行については、
・ 買いポジション、売りポジションで税務的な取扱いは変わらない。
・指値、成行どちらの取引でも税務的な取扱いは変わらない。
つまり、結果的に益が出たか、損が出たかで税務処理が変わってくる。
ということを知っておいてください。
 
【ケーススタディ】
9月1日に証拠金取引を行うため、bitFlyer Lightning証拠金口座に120万円を預入れ。
9月14日に1BTCが60万円のときに買いポジションを2BTC保有。
9月20日に1BTCが90万円に高騰したので、買いポジションをクローズし、利益確定。
 
【損益】
証拠金口座への預入れ……損益に影響はありません。
買いポジションの保有……損益に影響はありません。
買いポジションの決済……ポジションを持ったときの価格との差額が損益になります。
 
上記のとおり、仮想通貨運用益について税金がかかってきます。
 
仮に税率が10%とした場合、60万円× 10 %=6万円が税金になります。
 また、ビットコインが自分の思惑と逆に動いてしまった場合、損失となります。
 たとえば、 9月20日に1BTCが30万円に暴落したため、買いポジションをクローズして損切りした。
 
すなわち、
 「勝った分(証拠金口座から増えた分)」が利益
 「負けた分(証拠金口座から減った分)」が損失
となります。
 
 この他に、スワップ手数料や取引手数料などがかかる場合があるので、その手数料も加味して年間分(1/1~12/31)の合計利益を計算します。
 次に海外の取引所を使っている場合(BitMEX等)を使っている場合です。
 海外の取引所の場合、一般的に証拠金を円でなくビットコインで差し入れすることになります。
また、利益の金額が円でなく、ビットコインで表示されることになります(円で表示される取引所の場合は、日本と同様に扱ってしまって問題ありません)。
 その分日本の取引所より複雑になってきますので、こちらも実際の例を挙げながら確認してみましょう。
 
【ケーススタディ】
9月1日に証拠金取引を行うため、1BTCが50万円のときにビットコインを購入、証拠金口座に5BTC預入れ。
9月14日に1BTCが6000ドルのときに買いポジションを2BTC保有。
9月20日に1BTCが9000ドル(1ドル=110円)に高騰したため、買いポジションをクローズして利益確定。結果、証拠金口座は5・5BTCに増加。
10月1日に5・5BTCを送金し、日本円に交換。このとき1BTCは100万円だったとする。
 
実際の計算は専用アプリやソフトを使うと思うので一つひとつ、会計処理を考えることはあまりないもしれませんが、考え方だけでも理解しておいてください。
 
3 -3. FXトレードでロスカットを受けた場合
 
FXトレーダーにとっておそらくもっとも聞きたくない言葉、ロスカットについて説明します。
 ロスカットとは、ポジションと逆の方向に値動きした時に、ポジションの評価損の金額が証拠金の50%(取引所によって差があります)を上回ったときに反対決済をしてポジションが強制解消されることをいいます。ロスカットは、取引所としては取りっぱぐれがないようにするため、トレーダーとしては損失をいたずらに広げ続けるのを防ぐ意味があります。
 では、ロスカットしてしまった場合の会計処理を見ていきましょう。
 
【ケーススタディ】
9月1日に証拠金取引を行うため、証拠金口座に120万円預入れ。
9月14日に1BTCが60万円のときに買いポジションを2BTC保有。
9月20日に1BTCが45万円に暴落したため、買いポジションがロスカットされた。
 
 結論としては、ロスカットされた場合であっても特別な会計処理は必要ありません。
 
45万円を費やして自分で損切した場合と、処理としては同じになります。
 
3 -4. FXトレードでポジションを持ったまま期末日を迎えた場合
 
 補足になります。仮想通貨でポジションを持ったまま、期末日を迎えてしまった場合の話をします。ここでいう「期末日」とは、個人の方でいうと12月31日、法人の場合は「会計期末日」(3月決算であれば3月31日)になります。
 個人の場合の確定申告は毎年1月1日から12月31日までに発生した利益を計算します。では、12月31日の時点で確定していないポジション損益を見込みで利益に組み込まなければならないのでしょうか?
 
12月29日に買いポジションを2BTC(1BTC=100万円)持ちました。
 
12月31日までには値上がりする想定でしたが、予想に反して1BTC= 95 万円と少し値下がりしている状態だったとします。
 しかし、ここから必ず上がると確信しているため、12月31日で清算せず、来年までポジションを持ち越すことにしました。
 この場合、含み損になっている5万円(100万円-95万円)を確定申告で計上しなければならないかが問題になります。
 
結論から言うと、個人事業主の場合、ポジションを決済するまでは損益を確定申告で申告する必要はありません。ですので、翌期、ポジションを決済した段階で損益として計上することになるわけです。なので、年末の段階で評価益が発生している場合で、持っているポジションが評価損を出している場合は、あえてポジションを損切決済することです。これで税金が安くなる(節税になる)のです。
 具体的に言うと、12月31日までの利益が100万円、税額が5%とすると、およそ5万円が税金になります。今回、上記の5万円を損切することによって、利益が95万円、税額が4万7500円となります。税金を2500円安くすることができます。
 持ち続けたければ、翌年1月1日になってから改めて買いポジションを持てばいいでしょう。
 これは、仮想通貨の節税方法のひとつと言えます。
 
 ここで「全世界所得基準」とは、簡単に説明すると、日本に住んでいれば日本で税金がかかるし、日本に住んでいなければ日本で税金はかからない、ということです(もちろん、本当はもっと複雑です)。ですので、日本に住んでいる限り、取引所の場所がエジプトにあろうが、シンガポールにあろうが、日本で税金がかかってしまうということなのです。
 たとえばBinanceでいうとマルタ共和国、Bittrexでいうとアメリカ合衆国が本店所在国んなりますが、日本に住んでいる限りは取引所で得た利益は日本で申告し、納税する必要があります。
 
3 -5.FXトレードの取引所別の申告方法
 
計算方法としては上記のとおりですが、膨大にあるすべての取引を記録したり、具体的に計算するのは不可能に近いと思います。そこで、各取引所はすべての取引データをCSVデータでダウンロードできるようにしています。ここでは、日本の主要取引所であるZaifとbitFlyerの取引データをダウンロードする方法を説明します。
 
① Zaifの場合
Zaif 信用取引の履歴
❶  ログイン後、右上の「アカウント」をクリック
❷  各種サービスを選択し、「取引履歴CSV」をクリック
❸  「他の年を選択」で、最初の年を選ぶ。
❹  「信用取引」としてZIPファイルが現れるので、ダウンロード。画面に表示されていたパスワードで展開してCSVを取得する。
 
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② bitFlyerの場合
❶ お取引レポートを選択
❷  「Lightningの全履歴」のボタンをクリックしてファイルをダウンロード
❸  「証拠金の履歴」のボタンをクリックしてファイルをダウンロード
 
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次回、「第八回 仮想通貨のレンディング、マイニングについて」明日公開予定。
 
「続きが読みたい!」「本を購入したい」かたはこちらから予約受付中!!
 

■著者プロフィール

小山晃弘(こやま・あきひろ)
11987年大阪府生まれ。2010年03月 同志社大学経済学部卒業。大学在学中に公認会計士資格を取得する。世界に拠点を有する大手監査法人デロイト・トウシュ・トーマツに就職。トーマツ大阪事務所に勤務し、主に東証一部上場企業の会計監査や内部統制監査を担当。世界各国に子会社を有する連結売上2兆円規模の農業機械メーカーの米国基準監査・コンサルティングを経験。拠点を東京に移し、税理士法人 小山・ミカタパートナーズを独立開業する。

■著書紹介

【紙書籍】表1

<内容紹介>
税務上の仮想通貨取引の現在とこれからをわかりやすく解説。
個人で支払う?
法人で支払う?
仮想通貨に詳しい税理士が教える仮想通貨の税金の本!

出た!
これからの税金の本!
仮想通貨の税金について
一番わかりやすかった。――堀江貴文

【目次】
第1章 税務上の仮想通貨とは?
第2章 仮想通貨に関する国(各省庁)・国税庁のあゆみ
第3章 仮想通貨税務の全体像
第4章 仮想通貨の税務――個人編
第5章 完全網羅版! 仮想通貨取引のケーススタディ
第6章 仮想通貨の税務上の罰則
第7章 仮想通貨の税務――法人編
第8章 法人を利用した節税
第9章 中小企業経営強化税制
第10章 海外移転という道
第11章 税務調査

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