突然ですが、みなさんは「仮想通貨」を所有していますか?
2017年に「仮想通貨」ブームが巻き起こり、そこで仮想通貨に触れたかたもいらっしゃるのではないでしょうか?
しかし、仮想通貨で得た収益を確定申告しないと「脱税」になるとご存知ですか?
そのような仮想通貨の税体系を解説した書籍『これ1冊で大丈夫! 仮想通貨の確定申告がわかる本』(ゴマブックス)が12月1日(土)に発売されます。
本コラムでは、その書籍の内容を一部抜粋してご紹介いたします。
以下、『これ1冊で大丈夫! 仮想通貨の確定申告がわかる本』から抜粋
【仮想通貨の貸付け(レンディング)について】
4 -1.レンディングを行った場合
仮想通貨のレンディングについて話していきたいと思います。
仮想通貨で稼ぐ方法として、仮想通貨の値上がりを目的として保有する方法、FXを使って稼ぐ方法などを紹介し、ここまで会計処理について説明してきました。そのほかに、自分が持っている仮想通貨を誰かに貸し出しして、利息を得るという方法があります。これを「レンディング」と言います。
たとえば、あなたが日本円で100万円持っていたとします。それを誰かに貸すことになりました。親しい友達や親族に貸す場合はともかくとして、普通は年利3%など、利息を付けて貸し出すと思います。1年後に103万円にして返してもらうことで、利益が得られます。銀行と同じで、お金に利子をつけて貸し出すことで利益を得ています。
これとまったく同じことをビットコインやアルトコインでもできます。
上記の例で言うと、1BTC=100万円のときに1BTCを持っているものとして、年利3%でBTCを貸し出す、などがそうです。
なお、ここで貸し出した仮想通貨は、誰かの証拠金取引(FX)の原資として使われたり、取引所が仮想通貨を運用して利益を出したりするのに使われます。仮想通貨の貸出しなので、貸出相手の資産がなくなったり、取引所が破綻したりしない限りは、満期になったら返済されます。
なので、トレードやFXに比べて比較的低いリスクで運用することができるというメリットがあります。
一方で、先述のとおり、貸出相手や取引所の状況によってはGOX(仮想通貨が回収不可能になってしまうこと)してしまう可能性もあります。
また、貸し出している期間は保有している仮想通貨を売却できません。そのため、貸出期間中に仮想通貨が暴落してしまった場合は、得られる利息以上に仮想通貨の値下がりしてしまい、トータル損をしてしまう可能性もあります。
そのあたりのリスクに十分注意しながら、あまり長い期間貸したままにせず、こまめに回収するなどの工夫が必要になります。
4 -2.レンディングした仮想通貨が満期となり返還された場合
次に、レンディングの会計処理について考えてみます。まずは、レンディングで貸し出していた仮想通貨が満期になり、返済された場合の会計処理を説明していきます。
【ケーススタディ】
2017年10月1日に保有している仮想通貨1BTCを1年、年利2・0%でレンディングした。2018年9月30日にレンディングしていた1BTCが金利と合わせて1・02BTC返済された。
なお、2017年10月1日のBTC価格を100万円、2018年9月30日のBTC価格を120万円とする。
【損益】
ビットコインの貸出し……損益に影響はありません。
ビットコインの返済……損益に影響はありません。
利息の受取り……………受け取った金額を利益として認識します。
現在の会計・税務基準では、お金の貸付や借入に関しては損益を認識しません。なぜなら、そのお金は利益とは言えず、貸したお金がそのまま返済されるだけだから、プラスマイナスゼロ、という考え方なのですね。
ですが、利息に関してはお金が実際に増えることになりますので、利息部分についてだけ利益を認識するのです。「レンディングについては利息部分だけ利益を認識する」……ここの結論だけ覚えておいてください。
4 -3. レンディングした仮想通貨が戻ってこなくなってしまった場合
さて、不幸にもレンディングした仮想通貨が戻ってこないことが確定してしまった場合はどう処理したらよいのでしょうか?
レンディングした仮想通貨を取引所が元本保証してくれれば問題ありません。しかし取引所も保証してくれない場合は、実際のところ泣き寝入りするしかないというのが現状のところです。
この場合、会計処理はどのようにしたらよいでしょうか? 具体例を挙げて検討してみましょう。
【ケーススタディ】
2017年10月1日に保有している仮想通貨1BTCを1年、年利2・0%でレンディングした。2018年9月30日にレンディングしていた1BTCが返ってこない旨、取引所より連絡を受けた。
なお、2017年10月1日のBTC価格を100万円、2018年9月30日のBTC価格を120万円とする。
【損益】
貸倒れとなってしまった仮想通貨……条件を満たす場合のみ損失に計上できる
【解説】
仮想通貨が返済不能になった場合、税金的に言うと「貸倒損失」に該当するかどうかを検討することになります。「貸倒損失」についてわかりやすく言えば、掛けの代金や、貸したり預けたりしたお金が返ってこなくなってしまうことを言います。
もし貸倒損失にすることができれば、この損失を損金にすることができますので、税金をその分低く抑えることができることになります。ただ、貸倒損失はむやみに計上すると、利益操作が簡単にできてしまうことになりますから、条件がかなり厳しく設定されています。
貸倒損失については、国税庁のホームページに載っていますので、もし心当たりがある方は条件を確認してみてください。
「本当にレンディング資産が返ってくる見込みが0か?」
「全額返ってこないのか?」
「問い合わせを(何度も)して、その過程が記録として残っているか」 税務署が来て調査になった場合は、ほぼ必ず論点になる部分になります。非常に難しい繊細な問題なので、必ず税理士に相談することをお勧めします。
【マイニング等】
ビットコインにはマイニングという仕組みがあります。
マイニングとはマイナーと言われる事業者が各ブロックチェーン間の整合性を保ち、その報酬としてその仮想通貨を得る行為のことを言います。ここで言いたいのは、計算能力や保有量など、何かを提供した結果、見返り(報酬)として仮想通貨が得られる場合がある、ということです。すなわち、保有する仮想通貨が増加することになります。
では、マイニング等を行った場合にどのように会計処理を行ったらよいかというのをこの章で説明していきます。
5 -1.ビットコインやアルトコインのマイニングを行った場合
税金をどのように計算するかをおさらいしましょう。税金はざっくり以下の方法で計算していきます。
利益× 税率(所得税の税率)=税金の金額
このうち、利益は「売上高」と「経費」がわかれば自動的に計算されます。利益が決まれば「税率」も自動的に計算されます。よって、「売上高」と「経費」がわかれば、マイニング報酬の税額がわかることになります。
・マイニングにおける売上高について
マイニングにおける売上高とは「マイニングで得たビットコイン」です。
ビットコインのマイニングで得られた報酬は報酬用のウォレットに送られますが、このウォレットに送られたビットコインの総額を売上高として計上します。なお、マイニングの売上高の計上は、採掘時点、つまりマイニングが完了しウォレットにビットコインが送金された時点のことを言います。円に換えた時点ではないので注意が必要です。
・経費について
経費とは「売上を上げるために直接かかった支出」のことを言います。電気代や通信費、マイニングPCなどが経費になります。
ほかに何がどこまで経費になるかは、判断が難しいところになるので、「売上を上げるために直接かかった支出」かどうかを基準に考えてみてください。なお、マイニングPCは金額が大きい場合、一括で経費にならない場合がある(減価償却と言います)ので、気をつける必要があります。こちらについては後ほど説明します。
では、マイニング利益と税額を計算していきましょう。ここで計算した利益については、個人の場合は雑所得として計上します。仮想通貨のトレードや売買で得た利益と同じです。事業的な規模で行っている場合には、事業所得として計上することになります。
事業的規模とは、ざっくり言うと「相当の期間の間、一定規模の利益を上げていること」が条件になります。
事業所得になるか雑所得になるかの判断ですが、そんなに本気でマイニングをやっていない方は雑所得で計上しておけば問題ないと思います。
5 -2. ハーベスト(NEM)、VOTE(LSK)などのステーキング報酬を得た場合
アルトコインについて、ステーキング報酬を得た場合の会計処理について解説します。
通常、保有していること等が条件で仮想通貨が割り与えられるものを言います。コインチェックの銘柄で言うと、NEM(PoI)やLISK(DPoS)などが該当します。
配当のある取引所トークンの報酬もこちらに該当しますので、あわせて説明します。
結論から言うと内容は、ビットコインのマイニング報酬の場合と同じです。
税金の計算方法は以下のとおりです。
利益× 税率(所得税の税率)=税金の金額
続いて、ステーキングに関する「売上高」と「経費」について、順番に見ていきしょう。
・売上高について
ステーキングにおける売上高とは「ステーキングで得た仮想通貨」です。
マイニングで得られた報酬は報酬用のウォレットに送られます。このウォレットに送られた仮想通貨の総額を売上高として計上します。なお、ステーキング報酬の売上高の計上は、通貨の付与時点、つまりウォレットに仮想通貨が送金された時点のことをいいます。円に換えた時点ではないので注意が必要です。
・経費について
ステーキングに必要な経費はほとんどない、もしくはゼロ円になります。
マイニングと違い、電力の消費などもありません。計上できて、ギリギリ通信費くらいでしょうか。なので、売上の金額がそのまま利益になることが多いです。仮想通貨の保有が条件なのであれば、仮想通貨の購入代金が経費になると考えられなくもないですが、残念ながら経費にはなりません。
まとめると、ステーキング報酬の場合は、売上高(ステーキング報酬)がほとんどそのまま利益になってくる可能性が高いと考えられます。
5 -3.マイニングPCの税務処理方法
マイニングを行うためには、マイニングを行うためのPCが必須になります。この場合、購入したPCは一括で経費に落とすことができるでしょうか? もし、マイニングPCのような高価なものを一括で経費にすることができたとしたら、頭の良い人は次のように考えるかもしれません。
「今期は利益がたくさん出たから節税したいな。そうだ、マイニングPCをたくさん買って、出た利益をすべて全部PCの購入費用で充てて、税金をゼロ円にしてしまおう。翌年はマイニング報酬も入るし、節税もできて、最高だな!」
利益が出て、その利益でまたマイニングPCを買って……。毎年これを繰り返したら、国としては税金を永遠に取りっぱぐれてしまいますよね。国も馬鹿ではありませんから、こういった税金対策について一定の制限をかけています。
簡単に言うと、もしマイニングPCが10万円未満で購入できるような安価なものだった場合、一括で経費として計上できます。一方、10万円以上の価格となった場合は、一定の期間(新品のものであれば4年)で段階的に経費にすることにしているのです。これを減価償却と言います。
パソコンは1年で使えなくなることはほとんどないので、使える期間に応じて段階的に経費に振り替えることにしているわけです。ただし10万円未満の金額的に僅少なPCまで、長年管理するのは大変です。税務上はそこで「一括に経費にしてもいいよ」ということになっています。
経費として計上できるのは、あくまでパソコンがパソコンとして動く最小単位の状態にあることが条件です。手作りパソコンのように、メモリ、HDD……などと分けて購入しても、組み立てた後の合計が10万円を超えてしまった場合は、残念ながら一括で経費にはできません。注意が必要です。
補足ですが、マイニングを事業として行っている場合で、事業所得について「青色申告の承認申請書」を税務署に提出している場合は、1基あたり30万円まで一括で経費にすることができます。マイニングを事業として行う場合は覚えておくといいかもしれません。 マイニングPCなど高価なものは会計上、減価償却を行う必要があります。一括で経費にできないという点には留意してください。
5 -4.クラウドマイニングの投資の税務処理方法
クラウドマイニングについての会計処理を説明します。
クラウドマイニングとは、マイニングPCを自分で購入するのではなく、マイニング大手が保有しているPCの計算能力(ハッシュレート)を購入することを言います。
ざっくり言ってしまうと、「1日〇BTCを採掘できる権利を買う」という意味合いですね。
大手で言うと、国内だとGMO、海外だとGenesis MiningやHashFlareなどが取り扱っています。通常のマイニングとの違いは、マイニングPCの所有権にあります。
PCが自分のものなのか、外部業者が保有しているのかの違いがある、ということです。さらにクラウドマイニングには、1年など期限付きで採掘ができるものと、永久に採掘できるものがあります。契約期間によっても会計処理が変わってきます。
それでは、会計的な視点から具体的に見てみましょう。
まず、1年契約であれば、金額の多寡にもよりますが、一般的には、マイニングの対価を支払った時点で、一括で経費計上できるものと考えられます。契約期間で期間按分する必要はありません。一方、2年以上の契約の場合、支払った金額を契約期間で按分する必要があります。 たとえば2年契約で平成30年10月28日からスタートした場合、10月、11月、12月の3ヵ月分が、平成30年度の確定申告時の経費になります。よって、平成30年中は支払った金額の3ヵ月/24ヵ月しか経費に入れられないことになります。
クラウドマイニングが無期契約の場合、契約期間というものが存在しません。この場合の税務上の取扱いはどうなるかというと、「繰延資産(役務の提供を受けるために支出する権利金等)」に該当することになります。その場合の按分期間は、5年になります。ただし、金額が20万円未満であれば、一括経費計上をすることができます。
ここまでをまとめると、以下のようになります。
2.1年以上~契約期間が存在する場合 期間按分して計上
3.無期契約の場合 5年で期間按分(20万円未満は一括経費計上)
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■著者プロフィール
小山晃弘(こやま・あきひろ)
11987年大阪府生まれ。2010年03月 同志社大学経済学部卒業。大学在学中に公認会計士資格を取得する。世界に拠点を有する大手監査法人デロイト・トウシュ・トーマツに就職。トーマツ大阪事務所に勤務し、主に東証一部上場企業の会計監査や内部統制監査を担当。世界各国に子会社を有する連結売上2兆円規模の農業機械メーカーの米国基準監査・コンサルティングを経験。拠点を東京に移し、税理士法人 小山・ミカタパートナーズを独立開業する。
■著書紹介
<内容紹介>
税務上の仮想通貨取引の現在とこれからをわかりやすく解説。
個人で支払う?
法人で支払う?
仮想通貨に詳しい税理士が教える仮想通貨の税金の本!
出た!
これからの税金の本!
仮想通貨の税金について
一番わかりやすかった。――堀江貴文
【目次】
第1章 税務上の仮想通貨とは?
第2章 仮想通貨に関する国(各省庁)・国税庁のあゆみ
第3章 仮想通貨税務の全体像
第4章 仮想通貨の税務――個人編
第5章 完全網羅版! 仮想通貨取引のケーススタディ
第6章 仮想通貨の税務上の罰則
第7章 仮想通貨の税務――法人編
第8章 法人を利用した節税
第9章 中小企業経営強化税制
第10章 海外移転という道
第11章 税務調査