第1皿目 100個の弁当箱

マンガ家ユニット「うめ」小沢高広のマンガ家さんちのまかない

第1皿目 100個の弁当箱

2016年8月25日

マンガ家ユニット「うめ」の原作担当の小沢高広さんによるコラム、「マンガ家さんちのまかない」。毎日元気にマンガを描くためにも、小沢さんがおいしい「まかない」を作ります。小沢さんの特製㊙レシピや、マンガ作品の「実際につくってみた」などをお届けします。思わずよだれが出てくる、飯テロマンガならぬ、飯テロコラムがスタートです!

職場の全員で、いつもそろってお昼ごはんを食べる会社というのは、あまり聞いたことがない。でもマンガの現場はちょっとちがう。昔の徒弟制度の名残なのかなんなのか、スタッフみんなでそろって食べることが多い。税理士さんにも「マンガ業界の習慣ですよねー」と不思議がられたから、たぶんそれなりにめずらしいんだと思う。いわゆる「まかない」というやつである。

最近は、在宅の作画アシスタントさんを使う現場も増えているので、そういう習慣もだんだん減っているだろうとは思う。でも少なくとも、ウチはまだそういうスタイルだ。やれセルフパブリッシングだ、クラウドファンディングだ、デジタル作画だ、と新し物好きな印象の強いウチだけれど、スタッフとのやりとりは、対面の方にまだメリットを感じている。曖昧なニュアンスをやりとりしながら口頭で伝えられるのは、やはり便利だ。

よって「まかない」もある。もちろん出前をとったり、近所に食べに行ったりもする。でも、原稿の進捗を考えると、どうしてもお弁当がいちばん多い。

そんなある日、お昼のお弁当を買いに行ったスタッフから電話があった。
「いつもの弁当屋さんがつぶれてます!」
えー! あのおばちゃんのお弁当屋さんがなくなるなんて! ごはんの量が調整できて、おかずのバランスも良くて、まとめて買うと、自家製のぬか漬けをつけてくれるいいお店だったのにー。
「どうしましょう……?」
結局、その日は、近所のスーパーマーケットのお弁当になった。おいしくないとは言わないけれど、ごはんがぎっしりで、揚げ物がたっぷり。鳥の唐揚げを入れたら、もうコロッケと揚げ餃子はなくてもいいんじゃないかなー。野菜は申し訳程度、緑色はバランのみ。この歳になると、正直、この手のお弁当を連日いただくのはきびしい。明日のお昼どうするかなあ。仕事の進捗上、外に食べに行く時間もない。となれば、方法はひとつだ。

………作ろう。

初めてひとりで料理をしたのは、小学4年生のときだった。袋入りのインスタントラーメンを作ったのが最初。1時間以上かかってようやくできたのは、グズグズに伸びきったラーメンだったのを覚えてる。そのうち親がいない土曜のお昼なんかに自分で作るようになって、学生時代に家飲みのつまみを作るようになって、今じゃ家族のごはんをほぼ毎日作ってる。数年前には、料理好きの仲間と『給食系男子』なんてユニットを組んで、『家メシ道場』なんてレシピ本も出した。

幸か不幸か、その日の翌日は長女(8)の遠足だった。どのみちお弁当を作らねばならない。お弁当なんてものは、ひとつ作るのも、いくつか作るのも、手間は大して変わらない。材料を確認する。なんとか足りる。
ただ実際の工程を想像すると、課題も浮かんできた。お弁当箱である。外で買ってきたお弁当のいいところは、食べ終わったあと、そのまますべての食器類を捨てられるところにある。ウチの仕事場の人数は4人。たかだかお弁当箱4つとはいえ、洗い物が発生するのはめんどくさい。
よい「まかない」の条件のひとつは「時間がかからない」ことである。手早く食べらればいいというだけではない。準備から片付けまでのトータルで、時間がかからないことが重要だ。そこで用意したのが、使い捨て弁当箱。近所のスーパーで5個で420円だった。ついでに割り箸も買った。これで準備は完璧。そしてできたのがこちら。

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・しらすと枝豆の混ぜごはん
・豚の生姜焼き
・卵焼き
・ちくわきゅうり
・白滝とタラコの炒め煮
・ズッキーニのマリネ
・塩サバ
・漬物
「しらすと枝豆の混ぜごはん」は炊き込みでなくて、あくまで混ぜごはん。普段通りに炊いたあとにただ混ぜるだけだから、たいへん簡単。枝豆は冷凍のをプチプチだしたもの。塩味がちょうどいいので、なにかと便利。

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『深夜食堂』6巻p35より(小学館)

「豚の生姜焼き」は、安倍夜郎さんの『深夜食堂』にもあったように、いろいろなスタイルがある料理。今回は、豚バラ肉の薄切りと玉ねぎをいっしょに甘辛く炒めたものにした。バラ肉とスライスした玉ねぎを少量の油でさっと炒めて、タレと絡める。タレは、醤油:みりん:砂糖=3:2:1の比率が好み。そこにチューブの生姜を適当に入れる。玉ねぎがクタッとしているのが好みなので、途中で、すこし水を加えて、煮詰める感じにした。
「白滝とタラコの炒め煮」は、いつもはごま油とめんつゆで作る。でも今回は、甘辛いと生姜焼きとかぶるので、この日はバターと白だしで味付け。バターで、ほぐしたタラコとさっと炒めてから、うすめた白だしをさっと回しかけて、余計な水分を飛ばす。バターのコクとだしの旨みで、だいぶ危険な味になる。

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『きのう何食べた?』5巻p4より(講談社)

「ズッキーニのマリネ」は、ズッキーニを薄切りにして、グリルで素焼きにしてから、ドレッシングビネガーにつける。ミツカンのドレッシングビネガーは、よしながふみさんの『きのう何食べた?』で知った調味料。何かと使い勝手が良いので、切らさないようにしてる。
さてお昼どき。
さいわいスタッフにも好評で、700円くらいなら売ってもいいんじゃないか、と言ってもらった。
あーでも700円なのに、使い捨ての弁当箱に1個あたり80円も掛けちゃいけないね……。
というわけで、こちらを購入。使い捨ての弁当箱が100個。一度に4個使って25回。まあなんとかなるんじゃないかな。

(次回9月8日掲載予定! ※9月中は隔週で連載をお届けします)

ご紹介いただいたマンガ作品はこちら!
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『深夜食堂』安倍夜郎 (小学館)

『きのう何食べた?』よしながふみ (講談社)


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小沢 高広(おざわ たかひろ)漫画家ユニット「うめ」の原作担当。

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