今回もANOVAさんの話をする。
ANOVAを使って、日々、肉や魚をあれこれ調理してみているけれど、なんとなくすべて洋のイメージだった。できたものに日本酒を合わせることもあるけれど、イメージとしては「洋にあえて日本酒を合わせるイメージ」だ。
ところが、あるときFacebookで、友人の料理上手がふとつぶやいた。
「ANOVAって、だしとりに便利そう」
あー、なるほどー! その発想はなかった。そうだそうだ、その手があったか。
色々なだしがあるけれど、いわゆる「昆布だし」の一般的な取り方は以下の通りとされている。
1)昆布を水に入れてしばらく置く
2)火にかける
3)沸騰する前に火を止め、昆布を引き上げる
先に断っておくと、普段は、だしは取らない。液体の白だしがほとんどで、いちおう顆粒だしもストックしてある。お茶のパックみたいのに入ってるだしの素を使うこともある。市販のだしは手軽だし、十分おいしい。ただ、それ以上の理由がある。それは、自分でだしをとって市販のものよりおいしくとれた試しがないのだ。
言い訳をするわけじゃないけれど、この手のレシピはかなり曖昧だ。1)の「しばらく」にしても、レシピによって30分とするものから、ひと晩というものまで幅広い。だいたいひと晩って何時間? 加熱する時間だって、火加減もコンロによってずいぶん変わるし、沸騰する前って何度なのさー。うーん、わからん。『チューブ生姜適量ではなくて1cmがいい人の理系の料理』という本があるけれど、気持ちは大変よくわかる。
実は、21世紀になって、昆布だしにある革命が起きた。
昆布だしのおいしさ、というのは、そもそもの昆布の素材の違いはあれど、要は昆布に含まれるうまみ成分<グルタミン酸>をいかにより多く抽出するかにかかっている。その方法というのが、科学的に検証されたのだ。こちらの研究ノートである。
『京料理における一番だしのグルタミン酸含有量と香気成分について』
必要な部分を簡単にまとめるとこうなる。
「だし汁を調製する水の温度は60℃,昆布の浸漬時間が60分間のだし汁のグルタミン酸量は他の条件に比べて多い」
やってみよう。
まずANOVAで60度で安定させた湯の中に、さらに水を入れたジップロックを沈めて、60度のお湯を作る。そこに昆布を投入して放置する。のびのびと漂う昆布。うーん、いままでのANOVAにない絵面だ。だいぶメーカーの想定外の使い方の気がする。
うわ、すごい……。
ちょっとむせるくらいの昆布感。
せっかくだから、今日のまかないはこれを使おう。今回は、お弁当箱は使わない。
・焼き野菜のお味噌汁
・おにぎり(うめ、シャケ、胡麻味噌、コンビーフ、あげ玉、そぼろ)
・キュウリの即席漬け
<焼き野菜のお味噌汁>
カツオぶしを入れて、一番だしにしてもいいけど、ここは具だくさんのお味噌汁にしてみた。カツオぶしの香ばしい香りの代わりに、炒めた野菜とごま油で、香りを補うイメージだ。
1)野菜をフライパンで少量のごま油で弱火で炒める。炒めるというか、焼くに近いイメージ。ときおりひっくり返す程度で、8分程度じっくり火を入れる。
2)別の鍋で、先ほどの昆布だしに味噌を入れて、ベースの味噌汁を作っておく。
3)最後に強火で野菜に火を入れて、そこに2)を投入。
<おにぎり>
同じ大きさのおにぎりを作るのは、かなり熟練の技だ。ウチではこちらを使っている。
おにぎりなんて、まあ大した数作らないし、と専用の道具を買うのはさすがに躊躇してた。でもあるとき、近所のおにぎり屋さんが、これを使ってものすごい鮮やかにおにぎりを作っているのを見て、憧れて購入。これは便利。運動会や遠足など、定期的におにぎり作りが発生するすべての家庭におすすめしたい便利アイテム。
<キュウリの即席漬け>
1)キュウリにあらかじめ切り込みを入れてから乱切りにする。
2)塩と白だしとゴマであえて、ビニール袋で30分おく。
このあいだ久米島に行ったときに、ふらっと入った居酒屋さんで出て、それ以来よく作る。なんでもないし、まして沖縄料理でもないんだけど、なんだかおいしい。
わー、いいわー、お味噌汁。
今日は雪もちらつく天気なので、こういうのはしみる。味噌は少なめにして、野菜の香ばしさと昆布の旨味をあじわう、ほんのり味噌風味の和風スープみたいなイメージで作った。昆布のグルタミン酸ってこんなにちゃんと出るのかー。いやあ、料理は科学だ。
(次回、12月1日掲載予定です!)
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