待ってた本が届いてた。過去形なのは、数日の間、ぜんぜん気がついてなかったから。本をネコ餌とネコ餌の間にはさまんといてー>Amazon
こちらの本だ。
『dancyu』はじめ多くの媒体でフードアクティビストとして、食系コラムを書いたり、また食に関するイベントで活躍している松浦達也の新作だ。実は、男子料理ユニット「給食系男子」の仲間でもある。彼のレシピの特徴は、徹底的な裏付け。前作『大人の肉ドリル』でも、「すべてにおいしい理由あり」と銘打ち、数百に及ぶ論文など膨大な資料をひもとき、極めてロジカルに、おいしさと安全を兼ね備え、かつ簡単なレシピを数多く披露していた。今回の『新しい卵ドリル』の「はじめに」にこうある。
この本の執筆にあたり、古今東西の卵料理を改めて調べ直しました。そして約8000個の卵を使ってレシピを検証するなかで気づいたことがあります。
8000個。
一人1日1個食べるとして、約22年分に匹敵する。
………マヂかー。
例えば、ゆで卵。料理といっていいのか、悩むところではあるが『新しい卵ドリル』では「パーフェクトゆで卵」と称して、ゆで卵だけでなんと1章24ページをさいている。
誰でも失敗なく、簡単にカラを剥くことができる「ゆで卵」から「練りウニの半熟卵」まで、そのレシピも幅広い。コンビニなんかにある味付けゆで卵の作り方も載っている。飽和食塩水を使うんだろうとは思っていたけど、ええーっ、そうやるんだー。わずか10分!?
卵かけごはん、通称TKGもすごい。写真入りで4種。文字だけのものをあわせると35種も載っている。これ全部、試食して作って食べたのかー。たぶんボツになったレシピもあるだろうから…、と考えると、軽く目眩がする。まあ端的に言って変態だ。
オムレツのチャート式レシピなんてのものっている。あまたのオムレツレシピにあたりまえのように書いてあるフライパンのトントン。左手でフライパンを持ち、右手でトントンと叩き、オムレツの形を整えるアレである。あんな風に手際よくできるか!と毎度、腹立たしくなるのだけれど、この本には「トントン自信がない」人向けの方法も、ちゃんとのっている。わーい。
素材が素材だけに、『大人の肉ドリル』にも増して、ハードル低めのレシピが多く、かついちいち理屈が楽しい。あれこれ作ってみている。
黄身と白身をわけて、刻んでからあえる「マヨたまごサンドB」から始まって、続いて作ったのが、いや、作ったと言っていいのかわからないけれど「バターTKG」。つづいて生クリームを使わない「カルボナーラ」。余った白身活用ページにあった「中華風コーンスープ」。卵の黄身と白身の性質の違いをちゃんとふまえて調理すると、卵料理は格段にうまくなる、が根っこの理屈なのかなあ。なんにせよ、スーパーでは最近、卵を2パックずつ買っている。
もちろん今日のまかないは、こちらから作る。
・けんちゃんめし
・出し巻き卵
・鶏天
・さつまいもの梅酒煮
・のり巻きほうれんそう
<けんちゃんめし>
『新しい卵ドリル』で<都市伝説的卵料理!>の章にのっている福岡の料理。卵を使った炊き込みごはんって、ちょっと珍しいよね。昔、夏祭りのときに作ったのだとか。甘辛く煮た揚げといっしょに、ご飯を炊いて、溶き卵を入れて蒸らす。写真やレシピから想像する以上においしい。なんというか文字にすると「あ、うまいw」といった感じだ。ちょっと最後に笑いが入る。
<出し巻き卵>
こちらも『新しい卵ドリル』から。普段、作るときは、卵と出汁の比率が2:1〜3:1くらいなんだけど、こちらのレシピは1:1。こんなにやったら、水分出ちゃって、ダメじゃない?と思いきや、ちゃんとそのあたりの対策はしてある。秘密は、片栗粉と砂糖。それらで卵の保水力を補う。なるほどねー。食べると出汁がジュワーっと出る。これいいわー。色がよろしくないのは、レシピどおりに、薄口醤油や白砂糖を使わず、濃口醤油を黒糖を使っちゃったから。ちょうどきらしてたもんで。
<鶏天>
こちらは『大人の肉ドリル』から。レシピではモモ肉を使っているんだけれど、今日はムネ肉で。鶏天の本場、大分でもモモかムネかは、意見がわかれるらしい。めんつゆで水分を補いながら下味をつけるので、とてもジューシーな仕上がりになる。衣は市販の天ぷら粉を使う。小麦粉を氷水で冷やして…、なんて面倒はしない。そのへんの割り切り方もこの『ドリル』シリーズの好きなところ。そういえば、「タモリ倶楽部」でタモさんも、市販の天ぷら粉を使うのが、楽でおいしいって言ってた覚えがある。
<さつまいもの梅酒煮>
1cmの輪切りにしたさつまいもをひたひたの水と梅酒と少しの塩で煮る。冷蔵庫で数日は保存がきく常備菜。
<のり巻きほうれんそう>
のり1枚で、ほうれんそう一袋くらい。よく水を切って、まきすで巻く。のりがしっとりしてから切る。
次の『ドリル』はなんだろう。
『大人の肉ドリル』が出たあと、身の回りでは「次は『魚ドリル』?」なんて声もあったけれど、魚は同じ種類の魚でも、鮮度やサイズなどのパラメーターが多すぎて、この『ドリル』シリーズのアプローチとは、相性が悪い。そこで「次『卵』でしょ?」といち早く当てたのは、ちょっとした自慢だ。たぶん次は『揚げドリル』か『粉ドリル』だと思うんだけどなあ。
(次回、12月8日掲載予定です!)
ご紹介いただいた書籍、マンガはこちら! 『新しい卵ドリル おうちの卵料理が見違える!』 松浦達也 (マガジンハウス)
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