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第4皿目 長女、稲作にハマる

マンガ家ユニット「うめ」小沢高広のマンガ家さんちのまかない

第4皿目 長女、稲作にハマる

2016年10月6日

うまいうまいうまーい。新米の季節である。
この前の連休、友人たちと栃木に稲刈りツアーに行ってきた。日ごろ、お米を送っていただいている友人のご実家だ。もちろん、いつものまかないで使っているごはんはすべてこちらで収穫されたお米である。
実は半年前に田植えに誘ってもらったところ、このコラムの題字を書いている長女(8)が農作業に大ハマリした。どれくらいハマったって、田植えから稲刈り、精米の過程を学校で自分で調べて、友人のご実家へ「こんど、せんばこきで脱こくをやらせてください」と手紙を書くくらいにハマった。あまりのモチベーションの高さに親もつられて『GREEN』を読みなおしてみたり。
しかしその日は、あいにくの天気。道すがら、あちこちの田で稲が倒れているのを見かける。このところの長雨の影響だそう。そうでなくとも稲は濡れていると収穫が出来ないので、稲刈りは難しそう。わずかな雨の切れ間を狙って、初日はシソの実取り。ぷちぷちぷち。いわゆるお刺身の穂ジソを延々取る作業だと思って欲しい。ぷちぷちぷち。これはこれで楽しい。
晩ごはんは、参加したみんなで「新米にあうおかず」を持ち寄り、コシヒカリとミルキークイーンの新米をたらふくいただくという危険な晩餐。ウチはいくらと鮭のしょうゆ漬けと、千駄木のコシヅカハムのコンビーフで参戦した。栃木のお酒と栃木のギョウザもいただいて、お母さん手作りのシソの実のたまり醤油漬けも美味。全員で1升3合、新米を平らげた。カロリーのことは考えない。
翌日、長女、念願の米の出荷までを見せてもらう。残念ながら「千歯扱き」は、ずいぶん昔に処分してしまったとのことだけれど、脱穀して、精米して、袋に詰めて、出荷する手順をみせてもらう。そしてそしてちょこっとだけど、稲刈りも体験させてもらえることに。喜ぶ長女。ジープに乗って田んぼへ。長女、真剣な表情でカマでざくざくざくざく。あとで聞いたら「カマに緊張していた」そう。本物の刃物に緊張する経験はいいね。次女(5)はずっとカエルを追いかけてた。それはそれで楽しそう。
ざっととはいえ一通り見てみると、農業って効率化の積み重ねだったんだろうなあ、と思う。機械で植えるのはもちろんだけど、それ以前に腰にカゴつけて、ある程度の量の苗を持ってから田んぼに入るとか、いやいや、稲を列に並べて植えるのだって、たぶん何処かの誰かが、思いついて始めたはず。千歯扱きだってそうだし、カカシだって発想がすごい。『オーデュボンの祈り』に未来を見通すカカシが出て来たけど、たしかにそんな哲学的な風情はある。害獣を追い払うためにヒトガタを置くという発想は、だいぶクリエイティブだ。
農業をここまで進化させてきた力は、前例主義でなく、ハッカー気質というか、そういう類のセンスだったんだなあ、なんてことを土に足突っ込んで考える。不便に気づいて、考えて、やり方を変えていく。その辺の感覚は、日々連載をこなしていくなかで、漫画家が作画のノウハウをためていく感じと通じるところがあるように思った。次は『リトル・フォレスト』を読み直してみよう。

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・ごはん
・ポークソテー
・焼きナス
・粉ふきいも
・塩じゃけ
・ピーマンとジャコの炒め物
・レンコンのきんぴら

「ごはん」は新米のおいしさを存分に味わうために、シンプルに日の丸弁当。
梅干しも友人のお父さんの手作り。「去年は塩分4%で作ったんだけど、今年は3%。カビが生えないギリギリのところまで、塩分を減らしてみている」というお父さんの言葉が印象的。
「ポークソテー」と呼ぶにはちょっと肉が薄いんだけど、冷凍庫でちょうど人数分、生姜焼き用の肉が眠っていたので、こちらで流用。軽く塩コショウをして、片栗粉をまぶしてさっと両面ソテー。味付けは、醤油とバーボンとバター。この味付けはすごく美味なので、ぜひ試してみて。
「焼きナス」は大きめのナスが売っていたので、輪切りで多めのオリーブオイルで両面焼いた。途中フタをして、弱火でじっくり中まで火を通す。そのあとポークソテーといっしょに味つけた。
「ピーマンとじゃこの炒め物」は、ピーマンを縦に千切りして、じゃこといっしょに、ごま油で炒めて、白だしで味つけたもの。
「レンコンのきんぴら」は乱切りにしたレンコンをごま油で炒めてから、めんつゆで味つけて、ゴマふって完成。時短にはめんつゆはほんとうに便利。
ちなみに「粉ふきいも」「塩じゃけ」「ピーマンとジャコの炒め物」「レンコンのきんぴら」は前日の晩ごはんや当日の朝ごはんの残りだったり流用だったりするので、このお弁当用には、豚肉とナスを焼いただけ。所要時間は、たいだい20分くらいのはず。ミニトマトを使わなくても色味的に間が持ったのと、小分けのカップを使ってない点が個人的には満足した。

帰りの新幹線で、長女(8)とあれこれ話す。2017年現在、なりたい職業はいくつかあるのだけれど、そこに農家が加わった様子。それもいいと思うよ。なんてことを友人に話したら「この辺、田んぼ安いですよ」と現実的な話を聞かされた。お、おう……。

(次回は、10月13日掲載予定です!)

 ご紹介いただいた書籍はこちら!

『GREEN』 二ノ宮知子 (講談社)

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『オーデュボンの祈り』 伊阪幸太郎 (新潮社)

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『リトル・フォレスト』 五十嵐大介 (講談社)



小沢 高広(おざわ たかひろ)漫画家ユニット「うめ」の原作担当。

過去記事はこちら!

最終回 ごはんのできるまで

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前に、この連載で稲刈りに行った話「第4皿目 長女、稲作にハマる」を書いた。 農業って効率化の積み重ねだったんだろうなあ、と思う。機械で植えるのはもちろんだけど、それ以前に腰にカゴつけて、ある程度の量の苗を持ってから田んぼに入るとか、いやいや、稲を列...(2017年02月09日) >もっとみる

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