第7皿目 どうしてもチャーハンがパラパラにならないあなたへ

マンガ家ユニット「うめ」小沢高広のマンガ家さんちのまかない

第7皿目 どうしてもチャーハンがパラパラにならないあなたへ

2016年10月27日

料理のTips(秘訣)というのは、あれこれあるけれど、家庭でパラパラなチャーハンを作るTipsほど数多くあるものもめずらしいのではないだろうか。子供のころは、冷やごはんをとにかく強火で炒める、くらいだったように思う。生活ノウハウ番組とネットの普及が拍車をかけたのかな。特別なものを用意せずとも、家にあるものですぐに試せるところが楽しい。ただこれだけあるということは、どれも決定打にかけているとも言える。過去の戦歴はこんな感じだ。

【煙が出るまでフライパンを熱して、卵に火が通る前に、ごはんを入れてほぐす】
王道である。色味がキレイで、うまくいけば、お店のような仕上がりになる。ただ強火の料理は、すべからく難易度が高い。強い加熱は、食材を急激に変化させるため、ジャストな仕上がりになるストライクゾーンが狭いのだ。チャーハンにしても、ちょっとでもモタつくと、ごはんをほぐす前に卵が固まってしまうし、手早く仕上げないと、味付けにムラがあるうちに焦げてくる。それがウデだと言われれば、それまでなんだけど。自分の中では、ハイリスクハイリターンな方法としている。

【フライパンをあおって、米に直接火にあてる】
フライパンをあおって、米がパラパラと宙に舞う様はたしかに絵になる。直火に当てることで、余計な水分、油分を飛ばす、という理由があるらしい。自分は『美味しんぼ』の「直火の威力」で知った。もちろんやってみた。やってみたけど、無理無理ー。家庭の火力ではなんの意味もない。だいいち台所が散らかって後片付けが大変。

【一度に作るのは、一人前ずつ】
うん、正しい。たしかに上手にできる。でも、一人暮らしならともかく、そうでなければ、3〜4人前をなんとか一度に作りたいなと思う。思わない? 人数分、作って、洗って、炒めてを何回も繰り返すのは、面倒くさい。チャーハンという料理の手軽さが大きく削がれる。

【あらかじめ溶き卵とごはんを混ぜておく】
いわゆる黄金チャーハンと呼ばれるスタイル。やったことない人は、卵かけごはんを炒めると思ってくれれば、大体あってる。アレンジで白身だけ混ぜる、油も混ぜる、ゼラチンを混ぜるなどもある。最初は不安になるけれど、信じて炒め続ければちゃんとパラパラになるという再現度の高さは抜群。ただいかにも、あのTipsね、と丸分かりな仕上がりなのが、残念。

【炊きたてのごはんを使う】
自分が聞いたときは、冷やごはんは、フライパンの温度を下げてしまうから、温かいご飯の方がいいという理屈だった。うーん、最初のほぐれ方はいいんだけど、炊きたて米に含まれる水分は多い。だから炒めているうちにすぐにベタベタしてくる。またそれ以前の大前提として、炊きたてのごはんをチャーハンにするのって、なんとなく心理的な抵抗がない? やってはみたものの、うーん、二度目はやらなかった。
あらかじめ炊飯器に油や調味料も入れて、炊いてしまうやり方もある。これには、さらに水分を減らしたり、ゼラチンを入れたりというバージョン違いもある。某ガッテンでも紹介されたそうなので、ご存知の方も多いかも。うーん、再現性は高いレシピだとは思うけど、これはチャーハンなのか? ピラフじゃないのか? という疑問が拭い去れない。

【冷やごはんを工夫する】
冷凍したごはんを自然解凍する。冷蔵庫でラップをせずに冷やすなどなど。プロに、ごはんを水洗いしてから、ざるで水を切って、冷蔵庫で一晩寝かす、なんてのも教わって試してみた。たしかにパラパラしやすいんだけど、仕込みに時間がかかるのは、先述同様、自分にとっては、チャーハンの手軽さに反する。
ならばいっそ冷凍のチャーハンを使うという手もある。たしかに手軽で、完成度高いし、おいしいよねー。きっちりパラパラするし。現時点のある種の正解だと思ってる。ただ冷蔵庫の残り物を使うといった具材の自由度が低く、なにしろ、今日こそ完璧なチャーハンを作る、という野心が満たせないのがくやしい。

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・チャーハン
・チキンカツ
・ナスとひき肉の炒めもの
・春雨サラダ
・セロリの塩もみ

<チャーハン>今回は、最近知ったTips“「サトウのごはん」をレンジで温めずにそのまま炒める”という方法を使った。いまのところ、再現性と具材や味付けの自由度とのバランスがいい。この手のごはんは、常温で日持ちがするので、安いときに買いだめしておけばいいのもメリット。今回は、他のおかずもあることから、ネギ、卵、冷凍のインゲンだけでシンプルに作った。味付けは、塩、こしょうの他、創味シャンタン
<チキンカツ>もも肉に衣をつけて揚げてから、熱いうちにポン酢をかけたもの。モモ肉は、厚みにばらつきがあるので、ある程度、ひらいて、厚みを均一にしておくと、少量の油でも揚げやすい。
<ナスとひき肉の炒めもの>ひき肉は、塩、こしょうで軽く炒めてから、冷凍してストックしておいたものを使った。なにせ足がはやいのがひき肉。冷蔵庫で寝かせておくよりは、さっと火を通しておいた方が、少量ずつ使えたりもするので、便利。
<春雨サラダ>なにか一品足りないような気がして、ささっと作ったんだけど、春雨って味がしみにくいから、こういうのは前日にストックしておくべきだったかと反省。味付けは中華風のドレッシングで簡単に。
<セロリの塩もみ>今週の常備菜。いりごまと混ぜてもよかったかも。

お弁当にしても、まあまあのパラパラさをキープできるのが、このTipsのいいところ。でもデパ地下なんかで売ってる老舗中華屋さんのチャーハン弁当って、もっともっとパラパラしてるし、たぶん「サトウのごはん」は使っていない。
なんてことを思いながら、何かが引っかかって本棚をあさる。これだ。『めしばな刑事タチバナ』のこちらの一節。

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『めしばな刑事タチバナ』 坂戸佐兵衛 (著)、旅井とり (著) 徳間書店 14巻p123より引用抜粋

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『めしばな刑事タチバナ』 坂戸佐兵衛 (著)、旅井とり (著) 徳間書店 14巻p124より引用抜粋

ぎゃー。
たしかにそうだ、それもわかる。チャーハン道に終わりはない。

(次回は、11月10日掲載予定です! ※来週は休載です)

ご紹介いただいた書籍、マンガはこちら!
oishinbo_syoei4 『美味しんぼ』4巻 花咲アキラ、雁屋哲 (小学館)meshibana_syoei
『めしばな刑事タチバナ』14巻 坂戸佐兵衛、旅井とり (徳間書店)


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小沢 高広(おざわ たかひろ)漫画家ユニット「うめ」の原作担当。

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