戦いの神(MARS)がひきよせた凄絶のラブストーリー
「MARS」は惣領冬実によって描かれた少女漫画作品である。1996~2000年まで別冊フレンドにて連載。累計発行部数500万部のベストセラーとなり、2016年の1月にテレビドラマ化、6月に映画化される。「少女漫画の枠を超えた究極の恋愛漫画」と絶賛され、評価も高い。
タイトルにもなっているMARS(マーズ)には二つの意味がある。一般的な意味は火星。そしてもうひとつの意味は「軍神」。戦いの神の名前であり、この作品のシンボルとなっている。
主人公は麻生キラ、16歳。男性恐怖症で孤独感が強い性格であり、教室でも全く他人と関わらず片隅で絵を描いているような女の子。そんな主人公が公園で絵を描いていると、同級生の男子に病院へ行く道を尋ねられる。彼の名は樫野零(かしの れい)。モデル並みの美しいルックスをしているが、タバコを吸い女性関係も派手な遊び人だ。苦手な相手だと察した主人公は無言で手書きの地図を描いて渡し、逃げるように帰宅する。渡された地図の裏には、子供を抱きしめる母親のイラストが描かれていた。
後日クラス替えで同じクラス、隣同士の席になった二人。全く正反対の性格の二人はイラストをきっかけに急接近、徐々に惹かれあい「大切なもの」をみつけていく。
みんなの感想
◆恋愛の感覚や感情を激しく揺さぶられる作品
少女漫画らしく、なかなか過激な設定だなと思いましたが、読んでいるうちにその世界にどっぷりと引き込まれました。原作の時代背景はちょっと昔なんですが、それを感じさせないくらい圧倒的なパワーを感じます。「苦手だった人が人懐こい人になって、非常識な人が無邪気な人に変わっていく」。どんどん相手が自分の人生にはいってくる、繊細な描写が素敵だと思いました。
◆人間の本質を深いところまで描いた作品
「世の中にはどうしようもない悪意が存在する」という言葉が印象的でした。一見、正しいことでも実は歪んでいて陰湿さがあること。めちゃくちゃな人でも悪意や歪みのない、まっすぐさがあったりするということをうまく描いた作品だなと思いました。また、正反対のように見えて主人公と彼は深いところで似ていること。お互いの深いところにある孤独や暗い過去。それすらも受け止めていく愛情の深さに感動しました。