第二十二回目を迎える、私のBookイズム。
今回は、『さよなら、田中さん』で作家デビューをされた鈴木るりかさんです。
「12歳の文学賞」(小学館)で史上初となる3年連続で大賞を受賞した鈴木るりかさんはまだ14歳。
小説も漫画も両方好きだということですが、どんな作品をご紹介いただけるのでしょうか?
是非、ご覧ください!
鈴木るりか(すずきるりか)
2003年10月17日東京都生まれ。血液型A型。現在は都内の中学校2年在学中。
小学館が主催する「12歳の文学賞」で史上初、小学4年、5年、6年生時(2013~15)に、3年連続で大賞を受賞。選考委員だったあさのあつこ氏、石田衣良氏、西原理恵子氏から絶賛を受ける。小説を書くようになったきっかけは、「12歳の文学賞」の賞品の図書カードで『ちゃお』を一生分買いたかったから。
「12歳の文学賞」の受賞作を基にした『さよなら、田中さん』でデビュー。
好きな作家は志賀直哉と吉村昭。
鈴木るりかさんの好きな本 『完本 短篇集モザイク』
今後も永遠の目標・迷った時には羅針盤となってくれる作品
格別せっかちな性格というのではありませんが、読書に関しては、読み出すと一気に最後まで読み終えてしまいたくなり、そうなると長編だとなかなか大変なので、短編集を読むことが多いです。
この本は、短編の名手、三浦哲郎のまさに集大成。
どの作品も素晴らしいが、中でもとりわけ好きで、折に触れ、読み返しているのが『みのむし』。
とても短い作品なのだが、読後感は長編を読み終えたあとのように重厚で、ずしりと腹の底に沈む。
主人公のたけ婆さんは、齢八十近く、東北地方で米とリンゴ栽培の農業をしていたが、今は胃癌の末期で入院中。もう助かる見込みのないことを哀れんだ医師から、一時帰宅を勧められる。
しかしたけ婆さんは、そこまで病状が深刻だとは知らない。
ようやく夢にまで見たわが家に帰るのだが、その年は異常気象で凶作だった。
息子は出稼ぎに出ねばならず、孫は中学卒業後、板前修業に出たが、その後音信不通。
米が一粒も穫れないショックから、連れ合いの鎌吉爺さんは認知症が進み、たけ婆さんを見ても誰だか分からず、嫁は実家に帰ってしまっていた。
八方塞がりの絶望の中で、たけ婆さんが、ようやく気力を振り絞ってとった行動は…。
作品名の『みのむし』の意味がわかる終幕には、その衝撃で読後しばらく動けなくなる。
全く無駄のない文章、研ぎ澄まされた表現、どこを切っても血の流れる真実の小説。
いつかこんな短編を書きたいと思っていて、もし書けたら、その時は書く事をやめてもいいと思っている。
でもここまで到達するのは無理そうなので、細々とでも、自分はいじましく、しがみついて書いているのだろうという気がする。
今後も永遠の目標・迷った時には羅針盤となってくれる作品です。
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共感がいく度も蘇る、人生に作用する作品