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第8回 本当の戦争漫画「戦争飯」、読書感想文いきます

永江一石の電子書籍ダイアリー

第8回 本当の戦争漫画「戦争飯」、読書感想文いきます

2016年7月12日

さて、本日のお題。先週ですが


というツイート見て、うかうか買ってしまったこの漫画。


戦争めし (ヤングチャンピオン・コミックス)500円

が、非常に面白く、これが真の戦争漫画だなと思ったのでご紹介します。なお、作者の魚乃目三太さんには直接連絡を取って中の部分の使用の許諾をいただいております。Twitter便利!!

戦争漫画というと、自分の子供の頃には貝塚ひろしの

と、明日のジョーのちばてつやの

が双璧でした。前者はまだ脳天気な部分もたくさんあるのですが(南海の孤島の秘密基地だし)、こちらはさすがちば先生。戦争の虚しさや悲しさを描ききってます。完全な反戦漫画です。

で、このエントリーにも書いたように

うちのオヤジのちょっといい話

うちのオヤジは15歳で海軍の予科練にはいり、台湾で「震洋」という特攻のモーターボートに乗っていました。米軍が台湾に行かずに沖縄にいったので死なずに済み、「沖縄の人たちに申し訳ない」って言ってました(まだ存命ですが)。そんなわけで実際の戦闘経験は交代制で島の砲台にいたときに、上空を飛ぶB25に高射砲を撃ったらマグレであたった(確率数百万分の1!!)という1回。このとき基地に戻ったらパイナップル缶が振る舞われたという話を聞きました。海軍はシゴキはあったけどいじめはなかったようです。

しかし、陸軍はアホな大本営によって南海の孤島やインパールやフィリピンに送り込まれ、日本の戦没者230万人のうち7割が餓死ってみなさんは知っていますか?
一発で死ぬならまだしも、何週間、何ヶ月にも渡って飢えたあげく餓死するという苦しさは、耐えがたいものがあったと思います。こんなのまともな戦争じゃありません。軍上層部による自国民の虐殺です。こんな飢えた軍人が何百万人もいたわけで、現地の方にも大変に迷惑をかけたのはわかると思います。今回の安保法案で「また日本がアジアを侵略する」とか妄想の方がいましたが、いまの自衛隊には輸送手段もないのでできるわけもないし、日本人のマインドとして絶対やるわけない。第一、俺が許さん!!!

戦争の小説にはこうした「飢え」をテーマにしているものが多くあります。

昭和58年の直木賞受賞作。これは名作です。シベリアに拘留された実体験を描いたものですが、隠し持っていたカメラと黒パンを交換して、大きな塊を取られまいとして一気に食べてしまって亡くなった人とか・・・かなり悲惨。そしてシベリアに抑留されたのは兵隊だけではなかったという驚き・・・。

フィリピン戦線で食糧が尽きてさまよう鬼気迫る小説。心臓の弱い人には奨めません。

などがあるわけですが、漫画ではなかった。描きにくいということもあるだろうけど、「空腹は最高のスパイス」であるわけで、飢えの中で食べるならなんでも美味しいだろうと・・・
南海の孤島、ブーゲンビル島にたてこもった日本兵に、米軍の食糧パラシュートが落ちてきて、その中から一部を持って逃げ、作ったカツ丼。生きるか死ぬかの中で最後の一食となるかもしれないカツ丼・・・
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泣いてしまいますよ・・・・で、ついカツ丼食べたくなる。

シベリアに抑留されていた後の帝国ホテルのコック長の村上さんが、瀕死の兵士のために「死ぬ前にパイナップルが食べたい」というので冷凍の林檎で作ったパイナップルもどき・・・
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戦争にまつわるご飯話の短編集ですが、戦争は絶対にやっちゃいかんと強く思える作品でした。「飢える」って本当に苦しいと思います。好きなものが食べられる平和って最高です。

(次回は、7月19日掲載予定)

永江一石のITマーケティング日記」2015年9月24日よりhttps://www.landerblue.co.jp/blog/?p=22535


永江一石

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