#258 あなたといると、呼吸が深くなる
あなたの呼吸が、好き。
どこまでも、深い。
どこまでも、長い。
そんなに吐いて、もうそろそろ吸うかなと思うタイミングでも、まだそこから、吐き続ける。
まるで、海に潜っているみたい。
海の底に、どんどん潜っていくような感じ。
1ミリずつ、吐いていく。
ゆっくり、ゆっくり。
息を止めているわけでもない。
あなたといると、私まで、息が深くなる。
そんなに吐き続けるなんて、ムリムリと思いながら、気がつくと、楽になっている。
肺とは違う、どこからか、新しい酸素が入ってくる感じ。
あなたといると、息が深くなる。
深い森の中にいるような感じもする。
私の体の中を、森の奥から来た風が、通り抜けて行く感じがする。
心地いい。
私は、1本の管になる。
どこまでも、息つぎをしないで、泳いでいることができる感じ。
どこまでも、息つぎをしないで、フルートを吹き続けることができる感じ。
息つぎをすることすら、忘れてしまう。
私の全身に、新しい酸素が送りこまれる。
体が、透明になっていく。
クラゲになったみたい。
あなたを通った酸素が、私の中に入ってくる。
私の中を通った酸素が、あなたの中に入っていく。
さっきまで、冷たかった体が、どんどん温かくなっていく。
むしろ、熱くなっている。
あなたの酸素が、私の中で、笑っているのを感じる。