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#261  コートの、上から

あなたの体温が好き。
夏は涼しいのに、冬は温かい。
井戸の水のよう。
外に出て、気づいた。
寒い。
スプリングコートを、忘れた。
昼間は春の日差しになってきたけど、夜はまだ、冬の名残。
冬と春のリレーゾーン。
あなたの部屋に戻る。
チャイムを押す。
すぐ、ドアが開いた。
あなたの微笑みが待っていた。
手には、私のコート。
私が取りに戻ってくるのを、知っていたかのよう。
全部見ていたのね。
あなたに、くるりと背を向けた。
不思議。
あなたは、コートを持っているから、私の体を回せないはずなのに。
でも、確かに、あなたの手で、回してもらった気がする。
あなたの得意な魔法。
そして、羽衣を羽織るように、コートを着せてくれる。
温かい。
あなたの温かさを感じる。
と、思ったら、抱きしめてくれていた。
外の寒さで、冷たくなった私の手に、気づいてくれた。
みるみる温かくなる、と言うより、むしろ熱くなった。
今度から、わざとコートを忘れたくなった。



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