#269 ピーターパンに愛されて
あなたの、ピーターパンのところが好き。
あなたと、歩道を歩いていた。
一瞬、何が起こったのか、わからなかった。
頭の中で、プレーバックする。
あなたは、いつものように、車道側を歩いていた。
こういうエスコートの紳士的なところが好き。
交差点を渡ると、今度は、車道が逆側になった。
いつのまにか、あなたはまた車道側にいた。
いつ入れ替わったのか、気づかなかった。
私は、ただ、まっすぐ歩いていた。
そういえば
あなたとずっと、目が合っていた気がする。
あなたに見つめられていた。
考えてみれば、不思議。
隣を歩いているあなたと、目が合うなんて。
私は、まっすぐ前を向いて歩いている。
頭の中で、もう一度、再生する。
車道が、入れ替わった。
その時、あなたは、私の目の前に、浮き上がった。
あなたの目が微笑んでいる。
私は、歩いている。
あなたは、私の目を見つめて、浮かび上がったまま、後退している。
そして、何事もなく、車道側に移動していた。
私に、なんの衝撃もなかった。
むしろ、あなたに見つめられていたという快感だけが残った。
場所が、入れ替わったというより、あなたにキスをされたような快感だった。
あなたは、ピーターパンのように、私の周りを回って、私を守ってくれる。
そして、魔法をかける。
これは、反則でしょ。