#271 思い出しながら、くるまる
あなたの王子なところが、好き。
あなたと一緒に歩くのが、好き。
あなたと歩いていると、私がいかに、ちょこちょこ歩いているかがわかる。
あなたは、優雅に歩いている。
空から吊(つ)られて、足は地面に着いていないように、軽い。
足音がしない。
さっきから、私の足音だけが、うるさくなっている。
すれ違う人のリアクションを見るのも、楽しい。
美術展に一緒に入った。
チケットを確認する女の子の目が、一瞬、大きくなった。
驚いている。
あなたに気づいたのか。
ひょっとしたら、あなたのことは初めて見たけど、電流が走ったのか。
それに対して、あなたはいつも通りの丁寧な会釈をして、かすかに微笑んでいる。
もはや、私のチケットは何も確認されない。
どの作品よりも、入り口の女の子のリアクションの目が印象的だった。
美術館を出て、歩く。
この時間も、好き。
ガラス張りのカフェが並んでいる。
2人組の女の子がいた。
道が見える側に座っている女の子が、あなたに気づいた。
窓側に座っている女の子に、顔を近づけて、教えた。
窓側の女の子が、振り返って、あなたを見た。
窓側の女の子の目が、大きくなった。
これって。
さっきの美術館の入り口の女の子と同じ目になっていた。
ガラス越しで聞こえなかったけど、何かを叫んでいた。
あなたが歩くと、花までも開くみたい。
そんな出来事を思い出しながら、ベッドの中で、あなたにくるまっている私。