#274 ベッドの中で、詩を聴かせて
あなたの詩の朗読が好き。
あなたが、好きな詩を朗読してくれた。
ベッドの中で。
最初、何かを読んでるのかと思った。
読んでいなかった。
部屋の電気は、消えていた。
それでも、あなたは朗々と、詩の朗読をしてくれた。
朗読ではなくて、暗誦だった。
長い詩を、暗誦してくれた。
こんなに長いのに、思い出そうとして、つかえることもなく、あなたはまるで、天井に詩が書かれているかのように、詩を朗々と暗誦してくれた。
あなたの詩を読む声が好き。
あなたの声は、詩を読むために響いている。
こんなにロマンチックなことをしているのに、濡れている。
それは、もはや詩ではなかった。
メロディーがあった。
音楽だった。
あなたが読むと、詩は音楽をまとう。
今まで私が知っている詩は、音楽のない詩だった。
ベッドの中で、腕枕をしてもらいながら、あなたに詩の暗誦をしてもらう。
究極の贅沢。
1つの詩を読み終えると、余韻を味わう。
いい呼吸で、また次の詩を暗誦し始めてくれる。
日本の詩。
海外の詩。
美しい韻律。
部分しか思い出すことのできない自分が、ふがいなかった。
私の部分しか思い出せない詩も、あなたは完璧に再生してくれた。
あなたの中には、どれだけの詩がインプットされているの。
この人は、生きていることが楽しいに違いない。
だって、こんなに素敵な詩が、次から次へと美しい唇から流れ出てくるなんて。
それを聴いている私は、もっと幸せ。