#280 ネジを回し入れて
あなたのドライバーを回すしぐさが好き。
「あっ」
突然、私の持っていたバッグが、軽くなった。
一瞬、何が起こったのか、わからなかった。
私のカバンの取っ手が、外れていた。
私1人だと、あたふたするところだった。
あなたは、落ち着いて微笑んでいる。
「おや、ニューモデルのバッグだね」
あなたは、バッグの中に、手を入れた。
「あった」
取れたネジが、見つかった。
どうしてそんなに早く見つけることができるんだろう。
あなたは、自分のバッグからペンケースを取り出した。
なんと、ペンケースの中から、秘密兵器が出てきた。
小さな中に、ドライバーや缶切りや栓抜きなんかがいっぱいついている秘密兵器だった。
「この平ネジは、プラス2くらいだね」
ねじを、そんな名称で呼ぶのが、プロっぽかった。
やっぱり、あなたはスパイだったのね。
小さなネジをネジ穴に入れると、秘密兵器で、くるくると回した。
あなたが、ドライバーを回しているところを見て、高ぶってしまった。
あなたがドライバーを回すところって、どうしてそんなにセクシーなのかしら。
思い出した。
前に、お部屋の扉が動きにくくなっている時、ドライバーで直してくれた。
あの時も、セクシーだなと感じた。
ネジ穴に、なりたいって、感じた。
ネジ穴になって、あなたにドライバーでネジを入れてほしい。
どこまでも、どこまでも。
きゅっと、きつく締めてほしい。
あなたのネジが、螺旋状に、私の中に入ってくる。
私のバッグも、あなたから、離れられなくなったね。