» page top

#283 シュートを撃つ言葉

あなたの呪文が好き。
初めて会った時。
第一声に、迷った。
モタモタしてられないと思った。
モタモタしていたんでは、すれ違いで終わってしまう。
すれ違いで、終わらせたくない。
外れてもいいから、シュートを撃ちたい。
なんて言えば、シュートになるんだろう。
「本、読んでます」では、おとなしすぎる。
「抱いてください」では、品がない。
100万人の女の子があなたに声をかける。
たいていの言葉は、かぶってしまう。
よく言われているような、かぶった言葉では、シュートにならない。
言われていない言葉なんて、あるのだろうか。
それとも、逆か。
なにか、この言葉を言うと、扉が開く呪文のような言葉があるのだろうか。
「開け、ゴマ」のような。
「テクマクマヤコン」のような。
もっと、考えておけばよかった。
こんなに急に、出会える日が来るとは思わなかったから。
時間がない。
なんとかしなければ。
せっかく出会ったのに、一生、すれ違いで終わってしまう。
なんて、言おう。
なんて、言おう。
シュート。
シュート。
苦し紛れに、私の口から、考えていたこととは違う言葉が出た。
「『妄想日記』が、いちばん好きです」
本音だった。
扉が開く、音がした。



【中谷先生のおすすめ電子書籍TOP3】 紹介記事はこちらからどうぞ