#309 着たままのあなたを、味わって
あなたのスーツが、好き。
あなたのスーツ姿を眺める。
脱いだ体も好きだけど、スーツが同じくらい好き。
裸とスーツ、どっちでしたいかと聞かれたら、迷う。
まだ、こうして、あなたのスーツ姿を、眺めていたい。
味わわせて。
スーツを、すぐ脱がないあなたが好き。
お部屋に入ると、スーツをすぐ脱ぐようでは、大人じゃない。
あなたと一緒に、展覧会に行った。
春画を見た。
春画の衣装に、見惚れた。
エロティックなのに、描かれる人物は、衣装を着ている。
着ているから、エロティック。
絵師は、わざと脱がさなかった。
衣装を着ているほうが、エロティックであることを知っていた。
まだ、脱がないで。
女の子は、男の人の、スーツに高ぶる。
スーツを作ったのは、きっと男性ではない。
女性だ。
女の子が、どれほどスーツに高ぶるか、男性は気づいていない。
お願いだから、もう少し、スーツを着たまま、触らせて。
よだれが、垂れてしまった。
危うく、あなたのスーツを、私のよだれで汚すところだった。
ごめんなさい。
あなたの高級なスーツを汚さないようにしないと。
さっき、化粧室に行ったのは、手を洗いに行ったの。
ピッツァを食べた手では、あなたをスーツの上から触れなくて、残念だから。
早く、あなたをスーツの上から、触りたかった。
早く、脱がせたい気持ちと。
もう少し、スーツを味わっていたい気持ちが、私の中で、葛藤している。
葛藤している時間が、好き。
両方を、味わえる幸せ。