#316 あなたを、お持ち帰りしたい
あなたを、お持ち帰りするのが好き。
あなたに会って、今まで感じなかった感覚が目覚めた。
あなたを、お持ち帰りしたい。
今まで、男の人と食事をしたら、「お持ち帰りをされないように気をつけないと」と考えていた。
あなたには、私が、あなたをお持ち帰りしたいと考えていた。
面白い。
「お持ち帰りされたくない」の次は、「お持ち帰りを誘われたらどうしよう」。
その次は「お持ち帰りされてもいい」。
その間を飛び越えて、「お持ち帰りしたい」になっている。
「お持ち帰り」という言葉は、つまらない男の子にとっては、男の子が使う言葉だ。
でも、いい男の世界では、「お持ち帰り」は女の子が使う作戦なのだとわかった。
もたもたしていたら、あなたをお持ち帰りすることができない。
どうしたら、あなたをお持ち帰りできるかな。
そんなことを、考えていたら、つい口に出てしまった。
「あなたを、今、お持ち帰りするには、どうしたらいいですか」
場所は、バーのカウンターでもなく、お酒も一滴も入っていなかった。
完全なパブリックスペースで、聞いてしまった。
2人きりになった一瞬の出来事だった。
「いいよ」
こんな、いきなりな言い方でも、眉ひとつ動かさないあなたが好き。
あなたは、さんざんお持ち帰りを誘われている。
もはや、非日常ではなくて、日常。
断り方も、受け入れ方も、慣れている。
ギクシャクしないところが、ますます好き。
気がつくと、私のベッドにあなたがいた。
私は、あなたの腕枕の中にいた。
どこからどうなったか、覚えていない。
デジャブを、感じた。
どこかで、こんな体験をしたことがある。
思い出した。
夢の中で、私はあなたを、何度も、お持ち帰りしていた。