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#330 夕食の前に、ひと口

あなたを、ひと口させてもらうのが、好き。
夕暮れ時。
一緒に、晩ご飯を食べに行く。
出かける支度をしている。
楽しい時間。
さて、準備ができました。
と言い終わらないうちに、あなたに抱きしめられる。
あなたに抱きしめられると、すべての時間が止まる。
世界中が、ストップモーションになる。
世界中の動きが止まっている中で、私はあなたに抱きしめられている。
後ろから抱きしめられたまま、あなたにキスしてもらう。
私の唇が、あなたの唇に吸い寄せられて、首が伸びていく。
私の身体は前を向いたまま、首だけが、後ろのあなたを追いかけていく。
首に遅れて、私の身体が、スローモーションで、あなたのほうに回転していく。
まるで、ダンスをしているように。
スカートの裾が、遅れて回転する。
あなたは、唇だけで、私を回転させた。
あなたの長い腕が、私を包み込んでいる。
窓の外で、鐘の音が聞こえる。
夕暮れの時間を知らせる鐘の音。
それとも、私の心の中の鐘の音。
これから、晩ご飯を一緒に食べに出かけるところだった。
あなたの声が、あなたの胸から聞こえてくる。
「予約の時間を1時間、遅らせてください」
レストランの予約をしているからと、キスを中断するあなたではない。
晩ご飯の前に、あなたにかわいがってもらう。
あなたにかわいがってもらった後に、晩ご飯を食べる。
どっちが、セクシーかしら。
どっちも、セクシー。
あなたにかわいがってもらいながら、この後の食事のことを考えるなんて。
「今日のオーダーは、何に、しようか」
あなたが私の中に入りながら、オーダーを相談する。
食欲と性欲が、混じり合って、混乱する。
感じさせられながら、おいしいもののことを考える贅沢を、あなたは味わわせてくれる。



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