#333 あなたの木に、登る
あなたの、大木みたいなところが好き。
あなたに抱きつきながら、感じた。
この感覚は、どこかで感じたことがある。
思い出した。
木登りだ。
子供の頃、木登りが好きだった。
木に登っていくと、不思議な感覚を感じた。
地面を歩いているときには、感じない感覚だった。
今から思うと、あれば、セクシーな感覚だったに違いない。
当時は、そんなことに気づいていなかった。
木に登っていると、近所のおばさんに叱られた。
それはきっと、セクシーな大人の感覚を覚えるのは、まだ早いということだったに違いない。
スカートのまま、登っていった。
太ももを吹き抜ける風が、心地よかった。
枝の強さを感じながら、一歩一歩、登っていく。
登っていくという感覚が、快感が上り詰めていく感覚にも似ている。
枝の弾力を感じるところも、あなたの身体を感じているのに、似ている。
1本の大きな木が好きだった。
私は、いつもあの木に登っていた。
あなたは、あの木に似ている。
逆かな。あの木が、あなたに似ている。
ひょっとして、あの木は、あなた自身だったのかもしれない。
あなたは、私が少女の頃から、木の姿で、私の前に現れていた。
だから、あの木は、心地よかった。
あの木は、女の子に、人気があった。
そういえば、あの木に登っていたのは、私だけじゃなかった。
何人かの女の子が、あの木に登っていた。
あの木に登る女の子には、共通点があった。
かわいくて、おませな女の子だった。
あの木は、おませな女の子たちの秘密基地だった。
そして、今も、こうしてあなたという木に、抱きついている。