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#346 誰にも話したことがないことを

あなたのドン引きしないところが好き。
あなたと、初めて会って食事をした。
会うまで、緊張した。
何を話していいか、わからない。
あなたの教養のレベルに合わせた話ができるか。
できるわけがない。
マナーは、大丈夫か。
わたしの「ダメダメなところ」も、全部、見抜かれている気がする。
あなたは、微笑んで見つめてくれている。
ちっとも、怖くない。
まるで、ずっと前から恋人だったみたいに、接してくれている。
私は、人と話をするのが、苦手。
思いが先行して、適切な言葉が思いについていけない。
その結果、無口になってしまう。
思いとは、裏腹な言葉が、口をついて出てしまう。
だから、いつも、私は聞き役に回っている。
今日も、聞き役に回ろう。
……と、思っていた。
ずっと、私が、話していた。
初対面の人に、今まで誰にも話したことがないような、心の奥底の秘密を話していた。
私、何を言ってるの。
自分で、自分につっこんだ。
こんなことは、初めてだった。
気がつくと、レストランで、最後のお客さんになっていた。
時計を、見て驚いた。
もう、こんな時間。
時間が、飛んだ。
誰にも話したことがない秘密を、全部、ぶちまけてしまった。
あなたは、ドン引きしないで、聞いてくれた。
微笑みながら、私を受け入れてくれた。
とうとう、会ってしまった。



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