#352 あなたの体温で、いく
あなたの、体温が好き。
温かい。
ただの温かい、じゃない。
体だけでなく、心まで温かくなる。
熱いでもない。
体温計で、表現できない。
遠赤外線みたいな感じ。
あなたの温度が、私の体に入り込んでくる。
握手した時。
手が温かいと、感じた。
柔らかな温かさだった。
温かさに、硬い温かさと柔らかい温かさがあることを、初めて知った。
温泉のような温かさ。
あなたの温かさは、私を包み込んでくれる。
優しい温かさ。
あなたの体は、こんなに温かいのに、あなたは温かい缶コーヒーを持つのが苦手。
出来立てのクロワッサンも、持つことができない。
温かいお皿も持てない。
そんなところが、かわいい。
きっと、あなたの手のひらは、繊細にできているのね。
あなたが、深い呼吸をするたび、あなたの体が温かくなる。
あっ、思い出した。
あなたの温かさは、焚(た)き火の温かさ。
かすかに、炎が揺れている。
キャンプファイアを囲むと、どうして人は、内緒にしていた好きな人のことを話してしまうのだろう。
あなたの温かさに包み込まれていると、心が開放していく。
裸になって、委ねたくなる。
焚き火のような温かさで、縁側に当たる日向ぼっこのような温かさでもある。
そして、私は、あなたの体温で、いく。