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#361 ガラスに映り込む、本物のあなたは

あなたのシルエットが好き。
あなたと、美術館に行った。
貴族の収集品が、展示されている。
あなたと歩くと、あなたのお城の中を、案内してもらっているような感じがしてくる。
あなたが、小さな声で、説明してくれる。
時代背景、哲学、物語。
その囁(ささや)きさえも、セクシー。
最高のイヤホン・ガイド。
あなたのお話を聞くだけで、それぞれの収集品を持っていた人が、立ち上がってくる。
美術館にいるのか、あなたのお城にいるのか、わからなくなる。
美術品の保存のために、室内は、照明を落としてある。
美術品だけに、照明が当たるように、ライティングが工夫されている。
ある肖像画の前で、思わず声を上げそうになった。
室内が暗いので、ガラスに、あなたの影が映り込んでいた。
ガラスに映り込んだあなたは、まさに王子のシルエットだった。
王子の証しとなる首の長さ。
直接見る時は、あなたは魔法で庶民に変身している。
それでも、庶民から懸け離れてるんだけどね。
鏡の中では、あなたの正体は、バレてしまう。
鏡に映らないことで、ドラキュラがバレてしまうように。
あなたは、鏡の中では、お城の王子であることが、バレてしまう。
そういえば、地下鉄の中で、窓ガラスを見た時も、あなたのシルエットは、直接見るときより、はるかに王子だった。
お部屋に入って、鏡に一緒に映った時、鏡のあなたは、いつもより背が高かった。
私の背が低く感じてしまった。
あなたは、美術館の展示ケースのこちらにいながら、向こう側にも同時にいた。
そして、私に微笑みかけてくれていた。
直接見るあなたは、セクシー。
ガラスに映り込むあなたのシルエットは、それ以上にセクシー。



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