#368 知り合い、だったのか
あなたの磁力が好き。
奇麗な女性がいた。
ボールルームでのパーティー。
奇麗な人が、大勢いるパーティーだった。
その中でも一際、奇麗な人だった。
女性の私が見ても、奇麗だと感じる人だった。
奇麗というより、美しい人だった。
当然、ボールルームにいる男性は、みんなが見ていた。
男性だけでなく、女性も見ていた。
男性より、女性の目線のほうが厳しかった。
連れは、いないようだった。
(こんな、美しい人が、1人で)
(きっと、後から、素敵な男性が現れるに違いない)
(あんな美しい人は、どんな素敵な男性と付き合うのだろう)
(あんな美しい人が、彼の腕の中で、どんなに淫らに甘えるのだろう)
あなたを、見た。
(ひょっとして)
「知ってる人?」
あなたに、尋ねた。
「初めて」
あなたは、嘘はつかない。
半分の怖いもの知らずの男性が、声をかけた。
爽やかに、かわされていた。
半分の男性は、どうせすごい男がいるに違いないと、諦めていた。
熱心に粘る男がいた。
この場にいる一番の男性だった。
あなたを除いて。
美しい人は、あなたに歩み寄った。
そして、あなたの体に巻きついて、あなたにキスをした。
あなたは、いつもの姿勢のまま、彼女のキスを受け入れた。
声をかけた男性は、会釈をして、離れていった。
みんなが、見ていた。
(なんだ、やっぱり、知り合いだったんじゃない)
あなたは、嘘はつかない。
あなたは、本当に、初対面だった。