#370 初めてでも、慣れている
あなたの慣れている感じが好き。
あなたと、ホテルでランチ。
ミシュランの星を取ったフレンチレストラン。
あなたは、まるで自分の家のように入っていく。
ホテルのスタッフは、いつものように、出迎える。
センター・テーブルに、案内される。
フラワー・デコレーションのある席。
私を、花のサイドに座らせてくれる。
花の背中側の席は、2組のカップルが座っている。
1組で座っている私たちは、最上級の扱いをしてもらっている。
あなたが、常連さんだから。
あっ、もしかして。
メートル・ディが、メニューを持ってきた。
「初めてなので、教えてください」
ほらね。
慣れているように見えたのに、やっぱりあなたは初めて。
初めてなのに、慣れているように振る舞えるところが、凄い。
慣れているところで、慣れているように振る舞えるのは、当たり前。
初めてのお客様なのに、あなたを一目見て、センター・テーブルに案内するお店のスタッフは、さすが星のお店。
外国人のメートル・ディが、料理を説明してくれる。
選択肢があった。
あなたは、私に聞かずに、メニューを選んでくれた。
どうして分かったのかしら。
私が、食べたいものばかりだった。
あなたは、説明を聞く私のリアクションを見てくれている。
(+5000)と追加料金が書かれていたから、遠慮しようとしていた気持ちも察して、「どれがいい」と聞かない。
お店は、外国人のカップルが多かった。
お客さんも、スタッフも、全員があなたを見ていた。
センター・テーブルの花までもが、あなたを見ていた。
料理が、ドーム形のクロッシュに包まれて、運ばれてきた。
2人のスタッフが、息を合わせて、クロッシュを開けた。
立ち上る香りの中で、料理が、あなたを見て頬を染めた。