#377 桜が、見ている
あなたと見る桜が、好き。
あなたと、桜を見た。
桜を見る、あなたに見惚(ほ)れる。
桜を見ている女性がいた。
彼女は、桜を見ているふりをしていた。
桜を見るふりをしながら、あなたを見ていた。
「それは、見てしまうよね」とテレパシーで、彼女に話しかけた。
こんなにきれいな桜があっても、あなたを見てしまう。
桜を背景に、あなたのシルエットが浮かび上がる。
みんなは、顎を上げて、桜を見ている。
あなたの顎は、上がっていない。
上を向いているのに。
おなかも、へっこんでいる。
おなかを、へっこませながら、胸から、桜を仰いでいる。
胸で、桜を見ている。
胸で、桜を受け止めている。
あなたの軸のある体が、桜の幹に見えてきた。
桜は、花も素晴らしいけど、幹も素晴らしい。
絶妙なバランスで立っている。
桜の幹が、あなたの体に見えてきた。
これだけ満開の花を支えても、びくともしない強靭な幹。
ダンスを踊っている。
あなたと桜を見るまで、花ばかりを見ていた。
花よりも、幹が凄い。
「そうよね」と、あなたを見ている彼女に、話しかけた。
彼女から、微笑みが返ってきた。
あなたを、見る。
桜を、見る。
なんと、桜が、あなたを見ていた。