#380 2つの彫刻と、2人のあなた
あなたの彫刻なところが好き。
あなたと、美術館に行った。
彫刻展だった。
大きな空間に、距離をおいて、彫刻がポツンポツンと置かれていた。
最初、どうしてこんなに空間を空けるのか、分からなかった。
すぐに、気づいた。
それぞれの作品から、凄いエネルギーがほとばしっていて、これ以上近づけることができないのだ。
部屋に入るだけで、何物かが、そこにいることが分かる。
究極、彫刻は、部屋に1つでいい。
隣の部屋からも、強力なエネルギーを感じる。
彫刻作品は、おびただしいエネルギーを発している。
強力なのに、優しい。
どこかで、感じたことがある。
あなただった。
あなたの体から発しているエネルギーは、強力なのに、優しい。
彫刻展の心地よさは、いつもあなたに感じている心地よさを感じるからだった。
あなたに、似ている……。
あなたを振り返った。
振り返ったところにあったのは、彫刻作品だった。
さっきから、ずっと、あなただと思って、話しかけていた。
まったく、あなたの気配と同じだったから。
部屋には、私と、膝にブランケットをかけた係の女性だけだった。
彼女には、聞かれてしまったに違いない。
この部屋には、彫刻が2つある。
さっきまで見ていた彫刻を見た。
そこにいたのは、あなただった。
私は、さっきからずっと、あなたを見ながら、彫刻に話しかけていた。
係のお姉さんには、見られてしまった。
係のお姉さんも、目を伏せながら、あなたを見ていた。