#381 緑に光る竹のように
あなたの平安なところが好き。
夜のお寺に、あなたと行った。
夜、入れるとは、知らなかった。
誘われた時、てっきり昼間だと思っていた。
夜のお寺の中は、昼間の風景と、全く違っていた。
平安時代から続く、由緒あるお寺。
光源氏が、訪れたのは、こんな夜の世界だったに違いない。
あなたのシルエットが、光源氏に見えてくる。
照明を抑えて、真っ暗にしてくれているのが、心憎い演出。
真っ暗の中で、抹茶をいただいた。
抹茶が見えないくらい暗い中で、飲んだのは、初めてだった。
他の人は、せっかくの抹茶が飲める部屋を、通り過ぎていく。
あなたが、通り過ぎる人でなくて良かった。
開け放たれた縁側から、お庭が見える。
お庭の照明も、限りなく控えてある。
月明かりが、浮かび上がらせる。
源氏物語の世界は、こんな感じだったのだ。
古典で習った時は、全くこんな世界を想像していなかった。
でも、どこかで見た記憶があった。
1000年前に、私もここに座っていたような気がする。
そして、あなたもそこに。
お庭に、出た。
心字池を、巡る。
あなたの後ろ姿に、うっとりした。
築山に、上がった。
そこに、緑の林が浮かび上がった。
竹だった。
根元から、光を浴びている。
どんな満開の花よりも、夜空に伸びる竹の緑に、圧倒された。
しなやかで、たくましい。
この緑の竹は、あなただった。