#386 そびえ立つ、山のように
あなたの、そびえているところが好き。
あなたの体の上に、またがる。
山の上に、登っているみたい。
あなたと、スイスのインターラーケンに行った。
5つ星のホテル、ヴィクトリア・ユングフラウに宿泊した。
レッド・カーペットが敷かれていた。
どこかの国の皇室が宿泊するらしい。
登山列車で、ユングフラウに登る。
トンネルが続く鉄道。
氷河の中を、通り抜けていく。
地上の展望台に出た。
心地よい冷たさの空気が、肺の奥まで染み渡った。
目の前に、マッターホルンが見えた。
あるというより、そびえ立っていた。
そびえ立つというのは、こういうことなのかと思った。
これは、あなただ。
あなたは、そびえ立っている。
そびえ立つものには、畏敬の念を持つ。
征服するなんて、おこがましい。
登らせていただく。
あなたの体の上にまたがると、マッターホルンを思い出す。
そびえ立つものは、優しい。
リスペクトをもって登る者を、優しく受け入れてくれる。
リスペクトがないと、急に、恐ろしくなる。
あなたを、怖く感じる人もいる。
それは、リスペクトのなさの証しだから、仕方がない。
あなたにまたがることは、冒険。
あなたは、ベッドの中でも、冒険している。
あなたと一緒にいるだけで、冒険することになる。
あなたは、冒険を生きている。
冒険者しか得ることのできない濃密な時間を生きている。
あなたと一緒にいるということは、濃密な時間の渦に、飛び込むことだ。
最も高く、最も深いところまで、しがみついていく。