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#389 あとで、火照りが止まらない

あなたのマグマが好き。
あなたと、温泉に行った。
歴史のある温泉地。
旅館に着くと、さっそく、食事の前に大浴場に行く。
食事の前に、温泉に入るのが、贅沢。
ちょうどよい時間。
偶然ではなくて、計算して、そうしてくれている。
「大浴場へは、浴衣でどうぞ」
浴衣に着替えて、大浴場に向かう。
大浴場への長い廊下が、いい。
気分が、別世界に連れて行かれる。
だんだん、硫黄の香りがしてくる。
階段を、上がったり、降りたりしながら、大浴場にたどり着く。
男湯と女湯に、分かれる。
「何分くらい」という野暮なダンドリはしないのがいい。
お部屋付きの露天風呂もいいけど、大浴場も好き。
岩風呂と書かれている。
地下の洞窟に入ったような気分。
足元が、湯の花で、デコボコしている。
薄暗い中、湯船に入る。
薄暗い。
次第に、目が慣れてくる。
これくらいの暗さがいい。
天井が、思ったより高い。
天井の一部が、天窓のように開いている。
こうなると、高いというより深い。
壁じゅうが、巨岩でできている。
岩と岩の間が、くぼみになっていて、かつてはそこに仏像があったような、たたずまいだ。
女性器のように見えてきた。
私1人かと思ったら、若い女性が入っていた。
岩は、ゴツゴツしているのに、心地よかった。
あなたみたいだった。
「地下60キロメートルから湧き出ているお湯なので、5分以上入らないでください」
と、注意書きがされていた。
その意味は、夕食の時に、猛烈に火照ってきたことでわかった。
あとで火照らせるお湯も、まるであなただった。



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