#392 優しく、差して
あなたの育て方が、好き。
あなたの細い傘って、どこで売ってるのかしら。
銀座のイギリスのブランドのお店かな。
あら?
ちょっと、待って。
思い出してしまった。
今日の美術館巡りは、途中から雨が降り出した。
天気予報を見て、私はお気に入りの傘を持ってきた。
手ぶらが好きなあなたは、天気予報が雨でも、傘を持って出ない。
ソフト帽が濡れると皺(しわ)になるのでと、傘を買った。
あなたが入ったのは、コンビニ。
あなたが、ステッキのように細く巻いているこの傘。
イギリスの専門店で買ったのではなく、コンビニで買った傘だった。
もちろん透明ビニールではなく、少し上の黒でもない。
ネイビーの傘。
あなたのネイビーのスーツと、おそろい。
あまりにもマッチングしているから、コンビニで買ったことを忘れていた。
それにしても。
コンビニに、こんな高級な傘が売ってるものなのかしら。
「1本だけ、あったよ」
きっと、こういうこと。
コンビニのアルバイトの女の子が、きっと高級傘をご発注したに違いない。
まさか買う人がいないと思って並べたら、あなたが買った。
バイトの女の子は、ほっとしたに違いない。
値段を聞いてびっくりした。
安かった。
見えない。
あなたが、その傘を愛して、高級な傘に育てた。
私も、このネイビーの傘のように、あなたに育てられたい。
傘は、差してくれる人で、変わるのね。