#393 あなたの代わりに、ごめんなさい
あなたの代わりに、謝るが好き。
素敵な女性がいた。
文字通り「いい女」だった。
女性の私が見ても「いい女」だった。
そこにいた男性たちが、面白い。
いつもと違って、胸を張る。
胸を張り合い、声を張り合う。
自慢話が、始まる。
それだけで、「いい女」に緊張しているのが、伝わってしまう。
あなたは。
「いい女」がいても、いつもと変わらない。
「いい女」がいても、いい女じゃない女性がいても、同じ態度。
それが、セクシー。
いい女と、いい女じゃない女性とで、態度を変える男は、常に順位を意識している。
いい女にへりくだり、そうじゃない女性を見下す。
分かりやすい。
そして、最後にはこう言う。
所詮、いい女なんて。
敗北宣言の遠吠(とおぼ)えをする。
周りの男たちが、あたふたするなか、あなたは静かに本を読んでいる。
今、ほほ笑んだのは、いい女に対してではなく、本の中の世界に対して。
あなたは、いい女ですら、目に入っていない。
意識して、平静を装っているのではない。
本の中の世界に生きていて、俗世での出来事が、眼中にないのだ。
いい女が、あなたを意識している。
彼女の気持ちが、私には分かる。
ちょっと、イラッとしている。
あなたが、なぜあたふたしないのか。
ごめんなさい。
あなたに代わって、私が、謝っている。
この人が、いい女に全く反応しないのは、いい女だと感じていないからではなくて、もっと遠い世界に遊んでいるから、ごめんなさいと。