#395 妖精のように、感じる
あなたの、眠る姿が好き。
ハーバート・ドレイパーの『イカロス哀悼』の絵を見た。
父ダイダロスの命を破って、高く飛びすぎて、翼が溶けて、海に落ちて死んだイカロス。
ピエタ・ポーズに倒れるイカロスを、抱き締める水の妖精。
それを、後ろから、見守る水の妖精。
水の中から、心配そうに見上げる水の妖精。
イカロスを中心に、3人の水の妖精が、ドラマチックなX字の構図を作り上げる。
大きな羽で倒れるイカロスの姿に、平和を守る戦いからどろどろに溶けて帰宅するハウルを思い出した。
何よりも、イカロスは、あなただった。
ハウルを見た時も、あなたを感じた。
私には、イカロスが死んでいるようには、感じない。
無実の牢獄から脱出して、高さにチャレンジして、疲れ果てて、眠っているように見える。
死んだように眠っているだけ。
死んだように眠るあなたが、セクシー。
あなたは、いつも脱出を試みている。
そこまで高く飛ばなくていい高さに挑んでいる。
私は、この絵の中の3人の水の妖精の誰に感情移入しているのだろうかと考えてみた。
イカロスのあなたを抱き締める妖精ではないことに気づいた。
抱きしめている妖精を、後ろから見守る女性に、感情移入していた。
抱きしめている妖精の恍惚感を、後ろの妖精は、感じている。
2人分の恍惚感を味わっている。
さらに、水の中から、眺める妖精。
彼女はまだ、あなたに触れたことがない。
触れることを、ずっと想像している。
一番、妄想を膨らませているのは、まだ触れていない彼女かも知れない。
彼女が、一番感じている。
いや、一番感じているのは、私。
いま抱きしめている彼女よりも、これから抱き締める彼女よりも、すべての妖精の恍惚感が伝わる私が、一番感じている。
3人の水の妖精は、それぞれ違う形で、いっている。
あなたは、女を、妖精にする。