#405 「気持ちいい」を、叫び続ける
あなたにしてもらう「気持ちいい」が、好き。
さっきから、私は、同じ言葉を繰り返していることに、気づいた。
「気持ちいい」
何回、言ったことだろう。
これまで、そんなに言ったことがなかった言葉。
数えるほどしかない。
知っているけど、言ったことがない言葉だった。
今日だけで、何回、言っただろう。
数えきれない。
あなたに会うまでに一生で言った回数を、これまでの数時間で、追い越してしまった。
「気持ちいい」と「気持ちいい」の間に、隙間がない。
連続している。
というより、「気持ちいい」に次の「気持ちいい」が、かぶさっている。
「気持ちいい」が、オーバーラップしている。
ほぼ、同時に、「気持ちいい」を言っている。
体中の60兆の細胞が、同時に「気持ちいい」と叫んでいる。
60兆のコーラス。
「気持ちいい」という言葉に、ますます、感じてしまう。
「気持ちいい」の中に、いろんな感情が込められている。
「気持ちいい」という言葉さえあれば、どんな複雑なやり取りもできてしまう。
どんなふうに「気持ちいい」は要らない。
どれくらい「気持ちいい」も要らない。
「気持ちいい」という言葉を、呪文のように唱えている。
あなたが、尋ねたわけではない。
あなたに、伝えているのでもない。
言わずにいられなくて、叫んでいる。
隣の部屋で誰かが聞いたら、あまりの回数の多さに、目覚まし時計に違いないと感じるだろう。
私は、叫び続けていて、息を吸うのも、忘れてしまっている。