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#426 たくましい親指の優しさ

あなたの、たくましい親指が好き。
横浜美術館の「ヌード展」に、オーギュスト・ロダンの《接吻》を、あなたと見に行った。
大きかった。
重さは3トンを超す。
実際の重さより、重く感じた。
彫刻は360度、回って見ることができるのがいい。
ぐるりと回った。
見るのが、ドキドキした。
メガネの美人の監視員の女性がいるからではない。
目の前で、愛し合っている2人を、同じ場所で同じ時間に見ているような感じがした。
男性は、あなただった。
あなたと女の子と3人で楽しんでいる風景だった。
あなたが、彼女を抱きしめている。
彼女は、完全にあなたに身を委ねている。
あなたの優しさと、彼女の身の委ね方に、ゾクゾクした。
あなたと彼女は、私も仲間に入れてくれている。
ここにいるのは、あなたと私と彼女なのだ。
今は彼女が、かわいがってもらっている。
今度は、私が、かわいがってもらえる。
その次は、彼女と私で、あなたをかわいがる。
原題は、《パオロとフランチェスカ》。
パオロが、兄嫁プランチェスカと恋に落ち、発覚し、2人は死に追いやられる。
2人の恍惚は、死に追い込まれることで、さらに昇華する。
内縁の妻がいたロダンと、弟子で愛人のカミーユ・クローデルがモデルという説がある。
弟子で、愛人というもの、ドキドキする。
弟子で、愛人は、天才ロダンには大勢いた。
天才は、愛人と弟子の区別はない。
私は、彫刻のあなたの親指が立っているのを見た。
普通の人が、親指が立っているのを見たら、そこに迷いを感じるだろう。
でも、私は知っている。
あなたに、迷いはない。
立つ親指に、ふわりと抱きしめる、あなたの優しさがあるのだ。
美人の監視員の女の子のメガネを外したところを、想像していた。



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