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#427 モゾモゾ、ブブブ

あなたのモゾモゾ感が、好き。
あなたと、昆虫展に行った。
子供たちで、いっぱいだった。
音声ガイドのオマケに付いているクワガタのかぶりものを、子どもたちに交じって着けているあなたが、かわいかった。
昆虫を怖がらない子供たちを見ていると、意外に未来は明るいと思った。
私は、小さい頃から、昆虫が好きだった。
デザインよりも、鳴き声よりも、感触が、好きだった。
手のひらに載せた時に、脚が、モゾモゾする感じが、好きだった。
あれは、あの頃気づかなかったけど、きっとエッチな感覚だった。
セミを、手のひらにふんわり持つと、ブブブと震える振動が、好きだった。
あれも、エッチな感覚だった。
あなたに会った時、何もしていないのに、モゾモゾした。
昆虫の感覚だった。
何もしていないのに、ブブブと振動する感じがした。
あなたと、手をつないだ。
あなたの手のひらの真ん中から、モゾモゾする感覚が伝わった。
まるで、手の中に、昆虫がいるみたいだった。
ブブブという振動も、感じた。
セミを、ふんわりつかんでいる感じだった。
エッチな気持ちになった。
周りには、こんなに子供たちがいるのに。
周りに子供たちがいるということが、ますますエッチな気分を高ぶらせた。
子供たちが、昆虫の群れに見えてきた。
気持ち悪さというよりは、モゾモゾ感が、感じられた。
昆虫を、じっと見つめている女の子がいた。
この子は、エッチな感覚を感じていることに、私は気づいた。
これは、少女の頃の、私だった。
そう言えば、あの頃、昆虫展に行った。
その時、大勢の子供たちと昆虫たちに囲まれながら、クワガタのかぶりものをかぶった背の高い男の人を見た。
あれは、あなただった。



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