#428 苦しい、気持ちよさ
あなたとの法悦が、好き。
今日は、あなたと、美術館。
連休明けの雨の朝。
意外に、空いていた。
連休疲れした来館者が、お休みの朝。
美術館の建物が好き。
絵よりも、天井や、壁や、柱や、床を見てしまう。
美術館の静けさが、好き。
教会の静けさに、似ている。
美術館の匂いが好き。
何百年も前の絵の具の匂い。
何百年も前の空気を吸った絵が、目の前にあるということが凄い。
何百年も前の香りを、嗅いでいる。
あなたは、足音をたてずに、歩いていく。
ギリシャ神話の神々は、ロマンチックで好き。
神様なのに、恋愛が自由奔放。
禁欲的な中世の時代に、画家は、神話という口実で、描いた。
描きたかったのは、神話ではなく、エロティシズムに違いない。
自由に描くことができる現代より、ワンクッションしている分だけ、余計、エロティック。
殉教した聖人を描く時ですら、セクシー。
子どもの頃は、なんで西洋の人は、こんなに苦しんでいる姿ばかり描くのだろうと思っていた。
ある年齢から、苦しそうな顔が、セクシーな顔に見えてきた。
「法悦」という言葉を知った。
悟った時に、最高の恍惚を味わうらしい。
そんな絵を、あなたと見ている。