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#432 私の体の輪郭を、味わって

あなたに撫(な)でてもらうのが好き。
あなたが、頭を撫でてくれる。
気持ちいい。
私の頭が、そこにあったことを、思い出させてくれる。
あなたが、背中を撫でてくれる。
自分では見ることができない背中が、そこにあったことを、思い出させてくれる。
あなたが、お尻を、撫でてくれる。
自分では見ることができないお尻が、どんな形をしているかを、教えてくれる。
人間には、輪郭がある。
だけど、自分の輪郭の全てを、見ることはできない。
たとえ、鏡で見ても、後ろ側の輪郭は見えない。
手や脚は、まだ分かる。
自分で見ることができない部分は、あなたに優しく撫でてもらうことで、そこに輪郭があることが、わかる。
人が不安になるのは、自分の輪郭が見えなくなるからだ。
果たして、そこに自分の体が、本当にあるのか。
あると思っているのが、幻覚だったら、どうしよう。
不安になると、輪郭は、縮んでいく。
どんどん縮んで、固くなる。
最後には、なくなってしまう。
自分が、消えてしまう。
それが、不安の正体。
あなたに、抱き締めてもらう。
自分の輪郭が、あなたの体の感覚を通して、よみがえる。
「ああ、私の輪郭は、ここに確かに、ある」と。
それが、安心。
安心すると、輪郭は、柔なくなって、広がっていく。
広がった輪郭は、あなたの輪郭の中に、入っていく。
2人の輪郭が、重なり合う。
それが、この上ない、安心感になる。
私の輪郭と、あなたの輪郭の境目が、消えていく。



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