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#436 少女の頃から、出会っていた

あなたの仏様のような たたずまいが、好き。
どれくらい時間がたっただろうか。
あなたと、お寺のお堂の中にいた。
ふと、意識がどこかに行っていた。
眠っていたわけでもないのに。
だいぶ時間がたった気がした。
気がつくと、少女が1人、お堂の中にいた。
お父さんと一緒に来たのかな。
お父さんの姿は、見つからなかった。
少女は、千手観音を見つめていた。
そういえば。
私は、少女の頃、お寺に1人で行ったことを思い出した。
お寺の名前も、知らない。
仏像の名前も、知らない。
仏像の価値も、分からない。
だけど、なにか得体のしれない感覚を、味わっていた。
好きとか、嫌いとか、どちらの感覚でもなかった。
引き寄せられた。
言葉で表現できない感覚だった。
怖さと、安心感を、同時に味わっていた。
いつか、大切な人と、会いに来たいと思っていた。
あの時、私は、1人だった。
お堂の中に、仏様以外に、もう1人の男性がいた。
お坊様か、拝観者か分からない。
紳士だった。
そうだ。
少女の頃、訪れたお堂は、このお堂だった。
そして、そこで見た紳士は、未来で出会うあなただった。
お堂に1人でいた少女も、いつか大切な人とここへ来る。
いや、あの少女は、私自身だ。
ろうそくの炎が、揺れた。
見ると、少女の姿は消えていた。
仏様の口元が、かすかに ほほ笑んだように見えた。



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