#441 あなたの足の裏を、もませて
あなたの足の裏をマッサージするのが、好き。
あなたは、反復作業をいとわない。
「反復作業が、好きでしょ」
と言うと、あなたは「嫌いじゃないね」と笑った。
あなたの「嫌いじゃない」は、好きより上ということ。
かなり、好き。
あなたが反復作業をしている時は、真剣。
恐るべき集中力。
なのに、どこか、ほほ笑んでいるように見える。
ときおり、静かに、大爆笑しているようにも、見える。
それって、もう出来てるんじゃないって、思うことも、まだやめない。
私も、気がついたら、反復作業をしていた。
今、こうして、ベッドで、あなたの足の裏をもんでいる。
柔らかい。
厚みがある。
もんでいる私のほうが、気持ちいいのは、どうしてかしら。
いつまでも、もんでしまう。
あなたは、いつまでも、もませてくれる。
やめられない。
やめるタイミングが、見つからない。
あなたには、寝てもらって、朝まででも、もんでいたい。
座禅の「ゾーン」に入るって、こんな感じかな。
あなたの足の裏をもませてもらいながら、いろんな考えが頭の中に浮かんでくる。
それが、やがて、どんどん消えていく。
いつのまにか、何も考えずに、ひたすらあなたの足の裏を、もんでいる。
無念無想の境地。
あまりに、もみすぎて、あなたの足がなくなっちゃうんじゃないかと心配になるくらい。
やめられない。
まわりのすべてのものが消えて、私とあなたの足の裏だけが、ここにある。
味わっている私。
あなたの足の裏をもんでいるのか、あなたの大事なところを味わっているのか、区別がつかなくなる。
えっ。
今の感覚は、何。
とうとう、あなたの足の裏をもみながら、私はいってしまった。